【7月18日 AFP】宮崎駿(Hayao Miyazaki)監督の4年ぶりとなる映画『崖の上のポニョ(Ponyo on the Cliff by the Sea)』が、いよいよ19日に公開される。

 数週間前から多数のメディアで取り上げられてきた本作は、脚本も宮崎監督が担当。デンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)の『人魚姫(The Little Mermaid)』を題材にして、クラゲに乗って家出をしたポニョと呼ばれる魚の女の子を描いている。
ポニョは少年・宗介と出会う。宗介は「 ぼくが守ってあげる」と約束するが、ポニョは海に連れ戻されてしまう。しかし、人間になって宗介と一緒に暮らしたいと願うポニョは、妹たちの力を借りて再び人間の世界を目指すというストーリー。

 2004年に公開された宮崎監督の前作『ハウルの動く城(Howl's Moving Castle)』は、日本のオープニング興行成績の記録を破り、欧米やアジア諸国でも高い人気を得た。

 1997年の『もののけ姫(Princess Mononoke)』以来、CGを使用してきた宮崎監督だが、『崖の上のポニョ』ではCGを使っていない。「自分たちの体験でみていくと、電気がやったものでは人はあまり驚かない。自分たちはずっと鉛筆で描いてきてましたので、この際、思い切って鉛筆で、しかも鉛筆を全開させてやっていこうと」と、監督はNHKのインタビューで語った。

 本作ではキャラクターや物を動かすために17万枚の絵が作画され、宮崎駿作品で最高記録となった。スタジオジブリ(Studio Ghibli)によれば、これらの絵を描くのに、70人のスタッフで1年半かかったという。さらに、動かない背景画も手書きで描かれている。

「世界は全部動いている。世界を全部動かそうと思ってアニメーターになったんで、人間のキャラクターだけが動くんじゃない」と宮崎監督は話す。「草が揺れるだけじゃなくて、地面だって波打つ。世界は生き物だと思う。小さな子は皆、(この観念を)持っているんですよ」

 5歳の子がわかる世界をつくろうとしてきたと、監督は語る。「5歳の子は理屈でものを考えていない。直感的にものすごく世界の本質を理解していると思っている」。だが、子どもたちは成長するにつれ、地球に対する彼らならではの見方を失ってしまうのだという。

 監督業から引退すると繰り返し言ってきた宮崎監督だが、今作で監督はその健在ぶりを示している。『ハウルの動く城』は宮崎監督の最後の作品になるのではないかと言われ、アニメ業界の未来を憂う声も上がっていた。宮崎監督は2003年、『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』でアカデミー最優秀長編アニメ賞を受賞し、約半世紀ぶりに日本の長編映画がオスカーに名を刻んだ。2005年にはヴェネチア国際映画祭で栄誉金獅子賞を受賞している。(c)AFP