【5月28日 MODE PRESS】『ハッシュ!』以来6年ぶりの新作『ぐるりのこと。』を発表した橋口亮輔(Ryosuke Hashiguchi)監督が、製作の背景や主演の木村多江(Tae Kimura)とリリー・フランキー(Lily Franky)について語った。

――なぜ夫婦の物語を?

 前作では、孤独な価値観の違う人同士がつながる瞬間を描きました。ではその先、つながった人同士が生きて行く中で、どうすれば希望を持って生きられるか? そこから普通の夫婦の話、しかも絶対に離れない夫婦の話を描こうと思ったんです。

――ご自身がうつを経験されたそうですね。

 『ハッシュ!』公開後、張り詰めた糸が切れるように自分自身がうつになりました。 うつになると自分で解決済みと思っていた事柄が、フレッシュな感情でもう1度よみがえる。そう感じた時、日本人が変質するきっかけになったバブル崩壊から9・11テロまでの約10年間と、自分がうつになり、そこから抜け出すまでの時間が重なり合う気がしたんです。

 「希望を持って生きる」とは普遍のテーマですが、特にテロ以降、世界中の人々の切実な問題でもあります。うつで究極に孤独な状態を経てみると、「希望とは、人と人とのつながりの中にしか生まれない」と感じます。そういう映画を作ろうと思いました。

――木村さんとリリーさんを起用した理由は?

 台本を書き終え一年近く経った頃、リリー・フランキーさんの著書『東京タワー』を読みました。すると、そこに“カナオ”がいました。リリーさんは随分悩まれたようで、返事を頂くまで3カ月くらいかかりましたが、最後は快諾していただきました(笑)。30代の女優さん選びは難航しましたが、木村多江さんを思い描いたとき、彼女以外いないという思いは、すぐに強い確信に変わりました。

――撮り終えて、あらためて実感したことは?

 木村さん、リリーさんも、自分自身を投げ出すように撮影に臨んでいただき感謝しています。木村さんから、「翔子は私です」と言っていただいた時は感激しましたね。本当にこの2人でよかった! 長い製作にいたるまでの時間が報われる思いがしています。(c)MODE PRESS

公開情報:08年6月7日、シネマライズ/シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー