【5月25日 AFP】第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)のクライマックスを目前にし、審査委員長を務める俳優・監督ショーン・ペン(Sean Penn、47)が24日、仏ルモンド(Le Monde)紙のインタビューに応じ、カンヌではアカデミー賞とは「正反対の視点で」、革新的かつ型破りな作品を最高賞に選ぶべきだと語った。

■パルム・ドールは「流行やマーケティングに左右されずに」

「正直に言えば、最高賞パルム・ドール(Palme d'Or)を選ぶ最善の方法は、流行から自分たちの意識を解放し、我々とともに永遠に残る作品を探すことだ」

 ペン自ら2004年にクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督作『ミスティック・リバー(Mystic River)』でアカデミー賞主演男優賞を受賞しているが、「巧みな操作やマーケティングが評価されるオスカーとは逆の選出をしなければならない」と述べた。

 また、今年のカンヌは映画にとってとても良い年となったと語る一方で、暗い作品が占めた出品作に言及し、全22作が発表されたコンペティション部門のなかにもう少しコメディが多いと良かったと感想を述べた。

 今年のカンヌ映画祭は、未来を黙示録的に描いたブラジル作品『ブラインドネス(Blindness)』でオープニングを迎えた。その後、レバノンの難民キャンプで起こった虐殺事件におけるイスラエルの役割を描いたアニメ『Waltz With Bashir』、女子刑務所を舞台にしたアルゼンチン作品、マフィアをテーマにしたイタリア作品、息子を誘拐された母親を描いたイーストウッド監督作『The Exchange』などが上映された。

■ペンが委員長、政治的メッセージに栄冠?

 政治的指向が強いペンが審査委員長の今回は、純粋なフィクションよりもメッセージ性の強い作品が好まれる可能性が高いとの評がある。前述の『Waltz With Bashir』やスティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)監督が革命家エルネルト・チェ・ゲバラ(Ernesto Che Guevara)を描いた4時間以上の大作『Che』がそのカテゴリーに入る。

 ルモンド紙に対しペンは、各作品がもつ政治的内容について、審査員の間で議論が交わされたことを明かした。「一見政治的には見えない作品についても、各審査員が作品そのものや作品の要素に関する政治的性質をめぐって論じ合った。その議論の範囲を知れば驚くだろう。しかしわれわれが重視するのは、映画的経験。もちろんこの原則もさまざまに解釈ができるが」。審査員らには判断に影響を受けないために、出品作に関する批評をいっさい読まないよう求めたという。

 審査員はペンのほかに、イタリア人俳優・監督セルジオ・カステリット(Sergio Castellitto)、米女優ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)、メキシコ人監督アルフォンソ・キュアロン(Alfonso Cuaron)、タイの監督アピチャポン・ウィーラセタクン(Apichatpong Weerasethakul)、ドイツ人女優アレクサンドラ・マリア・ラーラ(Alexandra Maria Lara)、フランスの監督ラシッド・ブシャール(Rachid Bouchareb)と仏女優ジャンヌ・バリバール(Jeanne Balibar)、イラン出身の監督マルジャン・サトラピ(Marjane Satrapi)の9人。(c)AFP

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)