【5月25日 AFP】ドイツ人映画監督ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)の新作『Palermo Shooting』が24日、第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)のコンペティション部門出品作として上映された。

 同監督の作品としては15年ぶりに全編欧州で撮影された本作は、ドイツのパンクロック・バンドのボーカル、カンピーノ(Campino)が主演している。監督自ら「ロックンロールのパワーにささげる抒情詩」と表現する一作だ。

 キューバ伝統音楽へのオマージュとなった1999年の『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)』を世界的にヒットさせたヴェンダース監督は今回は、ルー・リード(Lou Reed)やニック・ケイヴ(Nick Cave)、ポーティスヘッド(Portishead)ら気に入りのロック・アーティストの曲を使用し、またも記憶に残るサウンド・トラックを作り上げた。

「音楽は私の人生で重要なんだ」とヴェンダース監督は語る。

「今回のテーマで映画を作る勇気、われわれがとても深いところで不安に感じていることについて語る勇気が、ロック音楽を聴いて、わたしの好きなバンドがそれについてどう歌っているかを理解してわいてきた。映画がもはや触れようとしないことを彼らは歌っていた」

 作品の中で、カンピーノ演じる主人公の写真家は、ヴェンダース監督の故郷でもあるドイツ、デュッセルドルフ(Dusseldorf)での生活を捨て、イタリアのシチリア(Sicily)島パレルモ(Palermo)に向かうが、ミステリアスな暗殺の標的となってしまい、デニス・ホッパー(Dennis Hopper)演じる「死」と向かい合う。そのほか、イタリア人女優ジョヴァンナ・メッツォジョルノ(Giovanna Mezzogiorno)が写真家に愛の贖罪的な力を教える女性を演じている。

 ヴェンダース監督は、イタリアを舞台に選んだ理由について、南に対する北欧人の永遠の憧れだと語った。撮影前にはドイツ詩人ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)がイタリアで過ごしたころの日記を読んだことも明かした。

「この作品は、ドイツ人のクラシックな旅、つまりイタリアへの旅だ。われわれ北に住む人間には、常に南を目指したいという願望がある。イタリアでの生活はとても満たされているように見えるんだ」

 ヴェンダース監督はカンヌでは常連。1984年には『パリ、テキサス(Paris, Texas)』で最高賞のパルム・ドール(Palme d'Or)、1987年には『ベルリン・天使の詩(Wings of Desire)』で監督賞、1993年には『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!(Faraway, So Close!)』で審査員賞を獲得している。(c)AFP

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)