【5月23日 AFP】リベリアの元少年兵たちを起用し、アフリカ史上まれに見る過酷な内戦における恐怖を語る映画『Johnny Mad Dog』が、第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)の「ある視点」部門にまもなく登場する。

「戦うことを強制された子どもたち」を描いたフランスのJean-Stephane Sauvaire監督(39)のこの作品は、コンゴ共和国の作家エマニュエル・ドンガラ(Emmanuel Dongala)の小説を基にしている。

 監督はAFPとのインタビューで、「幼年時代の暴力というテーマに魅了された。子どもにけんかはつきものだが、時に悪質で、残酷になることもある」と語った。コロンビアを舞台にした2003年のドキュメンタリー映画『Carlitos Medellin』で10代の子どもたちの暴力シーンを挿入した監督は、今回は2人の少年兵――15歳のボス「Johnny Mad Dog」と13歳の「Laokole」――が戦争の残虐さから逃れようとする姿を並行して描く。

 映画の舞台は特にどこと明示されないが、撮影はリベリアで行われた。監督自ら現地に出向き、500-600人の元少年兵に会ってまず15人を選び出した。そして首都モンロビア(Monrovia)に家を借り、1年間彼らと寝食を共にして信頼を得た。この間、映画のことも説明し、字が読めない子どもには脚本が読めるようになるまで指導した。

■ハリウッド映画にはないリアルさを目指す

「映画を限りなくリアルなものにしたかったので、実際に戦闘に参加した子どもたちを使い、実際に内戦を経験した国で撮影する必要があった。戯画化などできないくらい悲痛で暴力的な主題に、とにかく忠実でありたいと思った」 

 監督によると元少年兵たちは、『ブラッド・ダイヤモンド(Blood Diamond)』などのハリウッド映画は自分たちの戦争を語り切れていない、と不満を感じていたという。冒頭の「村が襲撃されるシーン」では、シーンの説明をする監督に彼らのほうから「僕たちにやらせてください。どうやればいいかわかっているから」と申し出があったそうだ。

 そうした制作手法にも不安要素はあった。少年たちの古い傷を再び開けることで、彼らを苦しめてしまうかもしれない……。だが彼らは「1年間の共同生活で変わった」という。気持ちが癒され、安定していったというのだ。「演劇」は、過去の苦しい記憶から逃れたい人々のために専門家が実際に行っている方法の1つだ。

「彼らの映画になった、と心から思う。カンヌから電話した時も『僕らの映画はどんな感じ?』と聞かれたよ」

 監督は元少年兵たちへの支援を継続するべく、Johnny Mad Dog基金を立ち上げている。

 前年、血のダイヤと少年兵をテーマにしたナイジェリアのニュートン・アドゥアカ(Newton Aduaka)監督の『エズラ(Ezra)』が、ブルキナファソで開催されるアフリカ最大の映画祭「フェスパコ(Festival Panafrican du Cinema et de la Television de Ouagadougou)」でグランプリを受賞している。(c)AFP/Paul Ricard

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)

Johnny Mad Dog基金の公式ウェブサイト(英語)