S・ソダーバーグ監督、『Che』で新たな革命起こせるか
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【5月24日 AFP】米国出身のオスカー監督スティーヴン・ソダーバーグ(Steven Soderbergh)がキューバの伝説の革命家エルネルト・チェ・ゲバラ(Ernesto Che Guevara)の半生を描いた4時間半に及ぶ最新作『Che』が第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で21日上映された。
■「自分の見たい映画を作る」
全編スペイン語からなるドキュメンタリー形式の『Che』は、上映前から多くの批評家たちの批判の的となっていたが、その後もその「型破り」な作風にさまざまな声が上がっている。
いったい誰のために映画を作っているのか、全編スペイン語、中南米の俳優をキャスティングした作品を、字幕アレルギーの北米の映画ファンにどうやって見せるのか――22日にはそんな質問が監督に投げかけられた。
ソダーバーグはそうした批判に真っ向から応じた。「わたしは自分の見たいと思う映画しか作らない。スペイン語でなければ真実味のあるゲバラ映画など作れっこない。文化帝国主義はもう終わりだ。これからの映画は、舞台となる国の言語で撮るべきだと思う」
ソダーバーグが指摘するとおり、2年前にはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(Alejandro Gonzalez Inarritu)監督の『バベル(Babel)』が、数か国を舞台にそれぞれの国の言語を使う、という手法でまた1つ映画界の壁を破っている。
■「背景を描くには長さが必要」
4時間半という長さについては「きちんと背景を描こうと思ったら、それなりの長さにはなるだろうね」とやり返した。
だが業界誌バラエティ(Variety)は、21日の上映後も長さについて容赦がない。「カンヌで上映されたフルバージョンの『Che』は、うわさによれば上映予定日に間に合わせるために急いで編集されたものだそうだが、再び日の目を見ることができたとしたらむしろ驚きだ。いかなる基準に照らし合わせてみても、1本の映画として扱える長さまで編集し直さないことには、まともな興行収入は望めないだろう」
制作費6000万ドル(約62億円)が投じられた『Che』は、今年のコンペティション部門の目玉だった。ソダーバーグ監督にとってカンヌは、若干26歳にして『セックスと嘘とビデオテープ(Sex, Lies and Videotape)』でパルム・ドール(Palme d’Or)を獲得し、その名を世に知らしめた場所でもある。
だが最新作『Che』は、つぼみのまま枯れようとしている。制作段階で米国内での資金調達に失敗した上、現時点で北米での配給も決まっていない。
■制作は『トラフィック』と同時進行だった
当初、本作におけるソダーバーグの役割は監督ではなく製作だった。制作に着手した1999年には、本作でゲバラを演じるベニチオ・デル・トロ(Benicio Del Toro)とともに後にオスカーを受賞する『トラフィック(Traffic)』の撮影中でもあった。
プエルトリコ出身のデル・トロはゲバラを演じたことについて、こんなふうに語っている。「一般的な米国人と同様、わたしも幼いころから、ゲバラは悪党というイメージを植えつけられてきた。だが、メキシコで彼に関する1冊の本と出会った。なんて温かい笑顔の男なんだろうと思ったよ。その本を買ってじっくり読んでみた。ゲバラがどれだけ人々から愛されていたかを知って、ますます興味がわいたね」
デル・トロとソダーバーグ、そして共同製作者のローラ・ビックフォード(Laura Bickford)は、欧州で制作資金を調達。その時点では、ボリビアを舞台にゲバラがキューバ革命を中南米各国に広めようとして失敗するさまを、2時間の映画に収めるつもりだったという。
だが監督がチームを去り、ソダーバーグが新たな舵取り役となったことから、そこに新たなシーンが付け加えられていった。カンヌで上映されたバージョンは第1部と第2部に分れており、前編ではゲバラとフィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長がバティスタ(Fulgencio Batista)政権打倒を実現するさまが描かれる。
「第2部を先に撮り、その後で第1部というように、過去にさかのぼるかたちで撮影を進めた」とソダーバーグは撮影秘話を明かした。
ゲバラの人生を綿密に再現するため撮影に最新の高性能デジタルREDカメラを駆使していることも、批判の的となっている。
「映画らしいシーンも、愛も感動もないのはどうして?」との質問をソダーバーグは「型にはまってないからって、いちいち否定するのはばかげてるんじゃない?」と一笑に付した。「ゲバラと共に生きる人生はどんなものだったのか――われわれが描きたかったのはそこのところだ。ゲバラのあの凝縮された人生。ほかの人間なら数100年かかることを、10年で成し遂げたんだからね」(c)AFP/Claire Rosemberg
カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)
■「自分の見たい映画を作る」
全編スペイン語からなるドキュメンタリー形式の『Che』は、上映前から多くの批評家たちの批判の的となっていたが、その後もその「型破り」な作風にさまざまな声が上がっている。
いったい誰のために映画を作っているのか、全編スペイン語、中南米の俳優をキャスティングした作品を、字幕アレルギーの北米の映画ファンにどうやって見せるのか――22日にはそんな質問が監督に投げかけられた。
ソダーバーグはそうした批判に真っ向から応じた。「わたしは自分の見たいと思う映画しか作らない。スペイン語でなければ真実味のあるゲバラ映画など作れっこない。文化帝国主義はもう終わりだ。これからの映画は、舞台となる国の言語で撮るべきだと思う」
ソダーバーグが指摘するとおり、2年前にはアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(Alejandro Gonzalez Inarritu)監督の『バベル(Babel)』が、数か国を舞台にそれぞれの国の言語を使う、という手法でまた1つ映画界の壁を破っている。
■「背景を描くには長さが必要」
4時間半という長さについては「きちんと背景を描こうと思ったら、それなりの長さにはなるだろうね」とやり返した。
だが業界誌バラエティ(Variety)は、21日の上映後も長さについて容赦がない。「カンヌで上映されたフルバージョンの『Che』は、うわさによれば上映予定日に間に合わせるために急いで編集されたものだそうだが、再び日の目を見ることができたとしたらむしろ驚きだ。いかなる基準に照らし合わせてみても、1本の映画として扱える長さまで編集し直さないことには、まともな興行収入は望めないだろう」
制作費6000万ドル(約62億円)が投じられた『Che』は、今年のコンペティション部門の目玉だった。ソダーバーグ監督にとってカンヌは、若干26歳にして『セックスと嘘とビデオテープ(Sex, Lies and Videotape)』でパルム・ドール(Palme d’Or)を獲得し、その名を世に知らしめた場所でもある。
だが最新作『Che』は、つぼみのまま枯れようとしている。制作段階で米国内での資金調達に失敗した上、現時点で北米での配給も決まっていない。
■制作は『トラフィック』と同時進行だった
当初、本作におけるソダーバーグの役割は監督ではなく製作だった。制作に着手した1999年には、本作でゲバラを演じるベニチオ・デル・トロ(Benicio Del Toro)とともに後にオスカーを受賞する『トラフィック(Traffic)』の撮影中でもあった。
プエルトリコ出身のデル・トロはゲバラを演じたことについて、こんなふうに語っている。「一般的な米国人と同様、わたしも幼いころから、ゲバラは悪党というイメージを植えつけられてきた。だが、メキシコで彼に関する1冊の本と出会った。なんて温かい笑顔の男なんだろうと思ったよ。その本を買ってじっくり読んでみた。ゲバラがどれだけ人々から愛されていたかを知って、ますます興味がわいたね」
デル・トロとソダーバーグ、そして共同製作者のローラ・ビックフォード(Laura Bickford)は、欧州で制作資金を調達。その時点では、ボリビアを舞台にゲバラがキューバ革命を中南米各国に広めようとして失敗するさまを、2時間の映画に収めるつもりだったという。
だが監督がチームを去り、ソダーバーグが新たな舵取り役となったことから、そこに新たなシーンが付け加えられていった。カンヌで上映されたバージョンは第1部と第2部に分れており、前編ではゲバラとフィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長がバティスタ(Fulgencio Batista)政権打倒を実現するさまが描かれる。
「第2部を先に撮り、その後で第1部というように、過去にさかのぼるかたちで撮影を進めた」とソダーバーグは撮影秘話を明かした。
ゲバラの人生を綿密に再現するため撮影に最新の高性能デジタルREDカメラを駆使していることも、批判の的となっている。
「映画らしいシーンも、愛も感動もないのはどうして?」との質問をソダーバーグは「型にはまってないからって、いちいち否定するのはばかげてるんじゃない?」と一笑に付した。「ゲバラと共に生きる人生はどんなものだったのか――われわれが描きたかったのはそこのところだ。ゲバラのあの凝縮された人生。ほかの人間なら数100年かかることを、10年で成し遂げたんだからね」(c)AFP/Claire Rosemberg
カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)