【5月19日 AFP】第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で18日、イタリアからのコンペティション部門出品作品『Gomorra』が上映された。イタリア人の著者ロベルト・サヴィアーノ(Roberto Saviano、28)が殺害予告を受けたことでも有名になったベストセラーのノンフィクション『死都ゴモラ(Gomorra)』を下敷きにした映画。

 ナポリ(Naples)に本拠を置くマフィア「カモラ(Camorra)」の実態を暴いた『死都ゴモラ』は、2006年にイタリアで発売以来、百万部を超える大ベストセラーとなった。ナポリの貧困地区に1979年に生まれた著者は、ギャングの抗争から始まり、建設業界への浸透、武器と麻薬の密売、有害ごみの故意の投棄など、カモラという犯罪シンジケートの「なりふり構わぬ」恐ろしさを描いた。

 だが、これがマフィアのボスたちを怒らせ、同年末には殺害計画が露見。サヴィアーノは警察の保護下に置かれる。「常に警官の護衛が付き、住む場所も定期的に変えている。もう普通の生活なんて送れない」と、サヴィアーノは最近レプブリカ(La Repubblica)紙に語っている。「マフィアが気にくわないのは、本の内容ではなくて、本が売れたこと。ナポリで出版されていなかったら、こんなことにはならなかったろう。むしろ自分たちが話題にのぼることがうれしくて、マフィアの間で本を回し読みしてたんじゃないかな」 

 出版元のマンダドリ(Mandadori)社によると、同書はこれまでに33か国語に翻訳され、舞台化もされている。

 マッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)監督(39)は、出版直後に本を手にして、すぐに映画化したいと考えた。物語はカモラとの接点を持つ人物5人に絞ることにして、撮影はカモラの居城とも言うべきScampiaも含めたナポリの貧困地区で、アマチュアの俳優を使って秘密裏に行われた。「終末論的で絶望的な映画。善と悪の二項対立として見ないでほしい。真実はもっと複雑で境界はもっとあいまいなのだから」と監督は語っている。

「公然と行われている(世界)最大の麻薬取引市場と、ギャング団同士の停戦協定が数年で破られ、大規模な抗争に発展していく過程を描いた。映画は暴力と残虐行為にあふれている」と話す監督は、最も感動的なシーンとして、ずっと親友だった2人の若者が、所属組織が違うために離れざるをえなかった場面を挙げる。

 また、登場人物の共通点は「システムに条件付けられた人間性、自分を粉砕する組織、そしてそれに対抗できない弱さ」だと語った。
 
 監督は、2002年カンヌ映画祭の「監督週間」に『The Embalmer』を出品している。(c)AFP

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)


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