【5月19日 AFP】第61回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)のコンペティション部門に唯一の中国作品として出品されている『Er Shi Si Cheng Ji24 City)』のジャ・ジャンクー(Jia Zhang Ke)監督と出演者が17日、記者会見で四川大地震の犠牲者に1分間の黙とうを捧げた。

 ドキュメンタリーとフィクションが混じった同作品は、12日に大地震が発生した四川(Sichuan)省成都(Chengdu)で撮影された。

 ジャンクー監督は会見会場に姿を見せると、出演者のジョアン・チェン(Joan Chen)、チャオ・タオ(Zhao Tao)と一緒に黙とうした。ジャンクー監督は「被災地で1年以上を過ごした。今の事態にとても心を痛めている」と述べた。AFPとのインタビューではさらに、自分がカンヌ(Cannes)にいることで、四川省の現実を世界に知ってもらいたいと語った。

 オリバー・ストーン(Oliver Stone)監督やデヴィッド・リンチ(David Lynch)監督らの作品や、ベルナルド・ベルトルッチ(Bernardo Bertolucci)の『ラストエンペラー(The Last Emperor)』などにも出演したことのあるチェンは、「映画に出てくる人々は、あの地域の人々。この作品が彼らの精神的な支えになってほしい。この作品を四川省に捧げる」と語った。

 スタッフらがカンヌへ向かう前夜、四川大地震が発生したという。中国政府は地震の死者数を5万人以上と推計している。

■工場労働者たち個人の視点から描く中国近代史50年

 ジャンクー監督にとって、カンヌ出品2作品目となる『Er Shi Si Cheng Ji』は、国営の飛行機工場「工場420」を舞台に中国の変わりゆく姿を描いている。撮影が始まるとときを同じくし、この工場は「24 City」と呼ばれる高級マンションに建て替えるために閉鎖された。

 作品では閉鎖に向かう中、工場で働く3世代の人々の暮らしが描かれている。現実とフィクションが混じった8人の登場人物が思い出を語る姿を中心に、ストーリーが展開している。

 計画経済の時代から文化大革命の経験、さらには1990年代、中国が市場主義経済へと向かう中での労働者解雇など、登場人物たちはそれぞれの人生を語っていく。

「社会主義や集産主義について、わたしは判断を下していない。それは歴史上の出来事が自ら物語るものだ。この時代が個人に与えた影響を見せたい。理念のために人々の自由が奪われるべきではない」と監督は語った。

 解雇され困難に直面した労働者、子どもが工場へ船で向かう途中に行方不明になった女性、働くことだけが人生だった女性などを通して、ジャンクー監督は中国近代史の50年を描き出している。
 
 監督は語る。「当初はドキュメンタリーを撮る予定だった。しかしあまりにも素材が豊富だったので、部分的に俳優を使うことに決めた」(c)AFP/Claire Rosemberg

カンヌ国際映画祭の公式ウェブサイト(英語)