【2月18日 AFP】第58回ベルリン国際映画祭(The 58th Berlin International Film Festival)開催中、パンク詩人のパティ・スミス(Patti Smith)の自伝とも言うべきドキュメンタリー映画『Patti Smith: Dream Of Life』が上映された。製作に12年を要したというこの作品により、スミスは過去の暗い記憶から脱し、再びミュージシャンとして歩み出そうとしているようだ。

 上映後、記者会見に臨んだスミスは、「ドキュメンタリーを作れとみんなから言われ続けてきたけど、わたしはそんなのいやだった。ドキュメンタリーなんて、誰かが死んだあとに作られるものだと思っていたから」と語った。

 ファッションフォトグラファーのSteven Sebringが映画の話を持ちかけてきたのは1995年。当時のスミスは、夫や兄弟、そして親友だった写真家ロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)氏までも亡くし、精神的にどん底の状態にあったが、16年間の活動休止から再生しようと模索してもいたという。

「お金はなかったし、2人の子どもはいたし。現実を見つめてもう一度出直す必要があった」とスミスは話す。「ポジティブになろう、たくましくなろうとしていた時に(Sebringが)来たの。彼がわたしを信じているということはすごく助けになったわ」

 その結果誕生したこの作品は、ありがちな音楽ドキュメンタリーのスタイルはとっていない。モノクロの16ミリフィルムは、スミスがツアーを再開し復活していく様子、決して順調なものではなかったスミスの半生、家族や友人の死といったものを非時系列にとらえていく。スミスにとって、この作品は「わたしの人生の一部を12年分を切り取ったもの」だという。

 作品はまた、スミスの政治的活動、とりわけイラク戦争に対する抗議の姿勢に焦点を当てている。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領のイラク政策に、大衆からの抗議活動が少ないことに不満を覚えていると話すスミスは、次のように語った。「政治的な歌は今も大衆の心を動かす力を持っている。でも、現在の世界情勢において必要とされるのは『行動』。アーティストは大衆に刺激を与えられる。でも、変化を起こすのは、結局は大衆自身だわ」
(c)AFP/Giles Hewitt