【2月8日 AFP】第58回ベルリン国際映画祭(The 58th Berlin International Film Festival)は7日、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督がローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のコンサートを追ったドキュメンタリー『Shine A Light』でオープニングを迎えた。

 今回の同映画祭では、英国のマイク・リー(Mike Leigh)監督、香港のジョニー・トー(Johnnie To)監督、米国のポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas Anderson)監督など、ベテラン勢の作品が注目されており、多くのファンがこの映画界とロック界のスターの供宴を一目見ようと、早朝から会場で列を作って並んでいた。

 コンペ外部門で出品された『Shine A Light』は、2006年にニューヨーク(New York)のビーコンシアター(Beacon Theater)で行われた2回のチャリティコンサートの未公開映像やその舞台裏の撮影映像、これまでの記録映像などで構成されている。ローリング・ストーンズ自身も制作に参加。同日のレッドカーペット前に行われた報道陣向けの試写会でも好評だった。

 スコセッシ監督は16台のカメラを駆使しして撮影。フィルムの長さは150キロにも及んだ。試写会後に行われた会見に登場した同監督は、「ライブには勝てない。だが、カメラで至近距離から細かい部分や躍動感を伝えられれば、見た人にライブに近い感覚を与えられるはずだ」と語った。

 膨大な量の映像の中には、最も熱烈なファンでさえも見たことのないようなシーンも出てくる。コンサートの細部に詳細な指示を出すミック・ジャガー(Mick Jagger)や、剣闘士のような目つきステージへ続く地下通路を歩くキース・リチャーズ(Keith Richards)などだ。

 曲目としては、「サティスファクション(Satisfaction)」、「ブラウン・シュガー(Brown Sugar)」、「シャッタード(Shattered)」、「ジャスト・マイ・イマジネイション(Just My Imagination)」、「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ(As Tears Go By)」などが収録されている。

 ジャガーの絶大なカリスマ性やセックスアピールを見せるため、初期の頃の映像も使用している。1970年代初めにトーク番組司会者のディック・キャヴェット(Dick Cavett)が行ったインタビューで「60歳になっても今と同じような活動をしていると想像できるか?」と尋ねられたジャガーが、「簡単に想像できる」と答える姿も。ジャガーは現在64歳だ。

 コンサートの最初から最後までステージ上を口を尖らせて気取ったように歩き、時には女性歌手クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)と腰を回すエネルギッシュなジャガーとは対照的に、リチャーズは背中を丸めて歩き、カメラは何度も彼の表情に表れた深いしわを映し出している。リチャーズは撮影について次のように語った。「撮影スタッフさえもどこにいるのかわからなかった。そこにいることすら知らなかった。わたしにとってそれは大切なことだった。映画を撮られていると分かれば、コンサートに集中できないからだ」

 一方、スコセッシ監督は記者会見で、ストーンズの曲が自分の過去の全作品にインスピレーションを与えてきたと話した。「『ミーン・ストリート(Mean Streets)』から『ディパーテッド(The Departed)』まで、ほとんどの作品の土台になっている。ストーンズのサウンド、コード、ボーカル、全体の雰囲気から刺激を受けた。曲を耳で味わうと、頭の中にイメージが浮かんでくるんだ」(c)AFP/Giles Hewitt