【12月26日 AFP】ハリウッド一の長寿を誇るアクション映画の主人公、ジェームズ・ボンド(James Bond)は、シリーズ開始から21作品が制作され45年の歳月が流れた今もなおエネルギッシュなヒーローだ―。「007」シリーズへの出演で知られる俳優ロジャー・ムーア(Roger Moore)が語った。

 同シリーズの熱烈なファンは、ショーン・コネリー(Sean Connery)以上の「ボンド俳優」はいないと言うかもしれない。だが歴史的に見れば、コネリーの6回を上回る7回の出演を誇るムーアが、最も多くの作品でボンドを演じている。

 ところが、2006年に大ヒットした『007/カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)』でボンド役を演じたダニエル・クレイグ(Daniel Craig)が、ムーアのボンド役12年という記録を越すのではないかと、ムーアはみている。「ダニエル・クレイグを多くの作品で見てきた。彼はとても良い俳優だ。『カジノ・ロワイヤル』で、彼が素晴らしいとアクション俳優だということもわかった」

 現在39歳のクレイグがあと10年間ボンド役を演じたとしても、1985年の『007/美しき獲物たち(A View To A Kill)』に出演したときのムーアよりまだ若い。当時58歳だったムーアは、同作品でのボンドは、自身のボンド役の中で最も嫌いだと語った。「この役には400歳ほど年を取りすぎていた」

 ムーアが出演した「007」シリーズの中で、最も好きな作品は『007/私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)』だという。同作品には、リチャード・キール(Richard Kiel)演じるジョーズが出演したほか、潜水艦に変形するスポーツカー「ロータス・エスプリ(Lotus Esprit)」などの多彩な特殊装備も登場した。

「『私を愛したスパイ』が一番良い作品だと思う。または、わたしが一番楽しめた作品だ。ロケ地も良かったし、監督のルイス・ギルバート(Lewis Gilbert)とも楽しくやれた。二人ともユーモアのセンスが同じだった。だから作品のおもしろさとサスペンス的要素のバランスがうまく取れていたんだろう」

「007」シリーズのファンは「どのボンド俳優が一番か」を語り合うが、ムーアは、ボンド役を演じた他の俳優とそんな議論をしたことは一度もないという。ムーア出演の『007/オクトパシー(Octopussy)』がリリースされた1983年に、ボンド映画のリメイク版『ネバーセイ・ネバーアゲイン(Never Say Never Again)』にコネリーが出演したときも、2人はそんな会話をしなかった。共通の友人であるマイケル・ケイン(Michael Caine)が、「メディアがあおるボンド同士の争いなどには加わるな」とアドバイスしたおかげでもあるという。

「ショーンとわたしは、たとえボンドガールたちとの共演のことでさえも、自分たちの経験を語り合うことはなかった。俳優というものは、自分の出演シーンについて議論することはない。誰かに『あれは駄作だ』と言われたときのためにね」

 またムーアは、クレイグが『カジノ・ロワイヤル』に出演するために筋力を増強しがっしりとした体型に変えた理由を理解できると語った。

「この役が体力的にどれだけ大変か、皆分かっていない。今でもアクションシーンは自分でやったのかと聞かれることに驚く。わたしにしろ、ショーンにしろ、ピアース(Pierce Brosnan)にしろ、あんなアクションシーンを全部自分でやっていたら、1本目のリールが終わるころには死んでいたはずだ」 (c)AFP