【11月10日 AFP】米ハリウッド(Hollywood)で次々に制作されているイラク戦争や9.11同時多発テロを背景に持つ映画作品が興行不振に苦しんでいる。不快なニュースを忘れるために劇場へ足を運ぶ映画ファンの支持を得られないことが原因だと専門家は語る。

 実在の戦争を題材にした映画は従来、終戦から数年を経た後に作られるものだったが、今もイラクに大勢の兵士が駐留する米国では現在、政治色の濃い作品が続々と公開されている。

 これらの作品はほぼ例外なく興行収益を上げることに苦労しており、しかも多くは評論家に酷評されている。

■次々とリリースされる「戦争映画」

 例えば、アカデミー賞受賞経験もあるポール・ハギス(Paul Haggis)監督の最新作『エラの谷(仮題、In the Valley of Elah)』は、イラクで命を落とした息子の死の真相を探る父親を描いた作品。評論家から好評を得たにもかかわらず、9月に公開されて以来、興行収入は総額で700万ドル(約7億7500万円)と振るわない。

 これらの作品の成績不振は、北米で今月後半に公開される数々の戦争映画にとっては悪い前兆だ。公開の予定されている作品には、ロバート・レッドフォード(Robert Redford)監督の『大いなる陰謀(Lions for Lambs)』や、実際に起きた米兵によるイラク女子学生暴行殺人事件を題材にしたブライアン・デ・パルマ(Brian De Palma)監督の『Redacted』などがある。

■専門家の見解

 映画サイトmovies.com編集者のルー・ハリス(Lew Harris)氏は、これらの作品が苦戦している背景にはイラク戦争や9.11同時多発テロの衝撃がまだ身近に感じられすぎるためだと語る。また多くの作品においては、娯楽的要素が不十分なことも要因だという。

 ベテランのテレビプロデューサー、スティーブン・ボチコー(Steven Bochco)氏は、イラクで戦う兵士たちの姿を描いた2005年のドラマ『Over There』が1シーズンで打ち切りになったことについて、「まるで人気のない戦争」を題材に視聴者の関心を引くのは無理だったとメディアに対し語っている。

 また同氏は、戦争の是非について判断が混乱し続ける中、、イラク関連の映画を観客に売り込むのは難しいだろうと述べる。(c)AFP/Rob Woollard