【5月28日 AFP】韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン、Roh Moo-hyun)大統領は28日、第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)で主演女優賞に輝いたチョン・ドヨン(Jeon Do-Yeon、34)を称え、韓国映画界の可能性の大きさを示す快挙だと述べた。

■韓国映画に大きな喝采

 盧大統領は、「韓国映画が再び世界から大きな喝采(かっさい)を得た。『密陽(Secret Sunshine)』に見るチョン・ドヨンの熱意と努力に、敬意を表する」と話し、李滄東(イ・チャンドン、Lee Chang-dong)監督やほかの関係者にも祝辞を述べた。

「『密陽』は、韓国映画が秘める可能性を示した。韓国人は創造性と芸術性にあふれている。一致団結して取り組めば、今後も多くの成功を収められるだろう」(盧大統領)

 チョン・ドヨンは『密陽』で幼い息子を失って嘆き暮らす若い母親を演じ、27日の授賞式で主演女優賞を獲得した。

 銀色のイブニングドレスに身を包んだチョン・ドヨンは、授賞式のスピーチで「この場にいることが信じられない」と述べた。

「カンヌにはたくさんの素晴らしい女優たちが集まっています。そのすべての皆さんを代表したいと思います。主演女優賞を頂いたことは、わたしにとってこの上ない名誉です」(チョン・ドヨン)

■迫真の演技をみせたチョン・ドヨン

2時間半の映画の中で、チョン・ドヨンの出てこないシーンはないといってもよい。

 チョンの演じるシネ(Shin-Ae)は、死んだ夫の故郷に息子とともにやってきたピアノ教師だ。幼い息子を夫の形見として溺愛し、母子は不自然なまでに密接な絆で結ばれている。

 その息子が誘拐され殺害されたことから、シネは悲しみを乗り越えるためキリスト教福音主義に傾倒していく。宗教的な熱情に突き動かされた彼女は、刑務所に息子を殺害した犯人を訪ね、彼を許すと告げるのだ。

 しかし犯人が穏やかな笑顔で犯行を後悔し、神の赦しを受けたと話すのを聞いて、おののく。彼女はキリスト教徒の友人に向かって、「私より先に彼を赦した神とは誰?」と尋ねる。

 チョン・ドヨンは1997年、『接続-ザ・コンタクト(The Contact)』で映画デビューを果たした。翌98年に『我が心のオルガン(Harmonium in My Memory)』で山村の小学校に通う少女を演じ、青龍映画賞と大鐘賞の主演女優賞を受賞。

 2003年には『危険な関係(Dangerous Liaisons)』をリメークした『スキャンダル』で、興行記録を更新した。2005年には『ユア・マイ・サンシャイン(You’re My Sunshine)』のエイズウイルスに感染した売春婦の演技で絶賛された。(c)AFP