【5月24日 AFP】5月27日まで開催中の第60回カンヌ国際映画祭(60th Cannes Film Festival)に史上初となる北朝鮮作品が出品されている。

 『The Schoolgirl’s Diary』と題されたこの作品は、2006年に北朝鮮で制作された2本の作品の1本で、ある少女の日常が学校生活を通し描かれている。世界中のどこにでも見られるような、仲間同士や家族に関する問題を扱っている。

■仏・配給会社が映画を購入

 「単なるプロパガンダ映画ではない」2006年9月の平壌国際映画祭でこの映画を購入したフランスの配給会社プリティー・ピクチャーズ(Pretty Pictures)のJames Velaise氏はこのように語った。2年に1度開催される平壌国際映画祭は、米国タイプの作品は排除するが、欧州や社会主義国の作品にはオープンな映画祭だ。

 「これは、北朝鮮が初めてカンヌに出品した作品です」Velaise氏はAFPの取材に対し、こう答えた。前年、北朝鮮国内では800万人の入場者数を記録、言い換えれば3人に1人の国民が鑑賞したと伝えられるこの作品は、今年末にフランスで公開される。

 18歳のPak Mi-hyang演じる主人公Su-ryeonは、一軒家ではなく、現代的なマンションに住みたいと言う。さらにはコンピューター、TV、おいしい食べ物、サッカー試合、日曜の公園でのピクニック、少しだけ覚えた英語を話す生徒たちなどが描かれたこの作品は、北朝鮮の隠された快適な生活スタイルを表している。

■“将軍様”も脚本・編集に関わる

 研究者と図書館員の両親のもとに、サッカー好きの姉Su-okの妹として生まれたSu-ryeonは、仕事に没頭し留守がちになる父親に不満を抱く。母親もSu-ryeonやSu-okと過ごす時間は少なく、父親のために夜も自宅で科学文献の解析を手伝っている。

 しかし、母親がガンで倒れ、父親が解析に成功すると、Su-ryeonは自分がわがままで自己中心的だったことに気付く。これは「将軍様」のように、愛と犠牲が国のために大きな役割を果たすということを意味するのだろうか。

 Velaise氏によれば、映画好きで自身でも数千本の映画を所持していると言われる金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong Il)総書記も脚本と編集に関わったという。(c)AFP