【4月4日 senken h】流行語をはじめ、その時代を反映するコトバはたくさんある。私たち同様、コトバもまた生きているということを実感する。そんな言葉と時間をキーワードに3作品をピックアップしてみた。

■『舟を編む』
 「舟を編む」はまさにドンピシャの作品。見出し語は24万語、編集方針は「今を生きる辞書」。完成まで15年という、言わば一生の仕事と呼んでも過言ではないプロジェクト「大渡海」の編集に挑むことになった出版社勤務の主人公、馬締光也(松田龍平)。マジメな彼は言葉を扱う仕事でありながら、いざ自身の心情表現となると不器用極まりない。日々の生活は元より、運命の女性(宮﨑あおい)への告白ともなると…。静けさの中に熱い情熱を秘めた人々を、時にユーモアを交え描いた本作は、2012年「本屋大賞」ナンバー1に輝いた三浦しをんの同名小説の映画化だ。

■『ブルーノのしあわせガイド』
 ローマっ子のスラングで「まあいいから、落ち着け、リラックス」という意味を持つ「SCIALLA!」(シャッラ)が原題のイタリアン・コメディー「ブルーノのしあわせガイド」。タイトルとイコールで結びつくタイプの主人公ブルーノは、タレントの自伝を手掛けるゴーストライター兼、元教師のキャリアから家庭教師も行なう気ままな中年シングル。ところがある日、単なる生徒であるはずの少年の母親から、仕事の都合で息子を半年間預かってほしいと依頼され、さらに2人の息子であると告げられる。父であることは内密に、突然始まった2人の時間。果たして彼らの共同生活は行く末はいかに。

■『孤独な天使たち』
 監督デビュー50周年を機に、10年ぶりの新作「孤独な天使たち」を携えベルナルド・ベルトルッチが映画界に戻ってきた。10代にありがちな「誰にも分かってもらえない」という思いと現実逃避、そして秘密基地のような空間と時間。そうした全てが散りばめられた物語は、地下室で再会し再び日常へと羽ばたいていく異母姉弟の1週間。デヴィッド・ボウイ「スペイス・オディティ」のイタリア語版「ロンリー・ボーイ、ロンリー・ガール」は、「この映画の特定のシーンのために書かれたように思えた」と語る監督の言葉がとても印象深い。(c)senken h / text:宇佐美浩子

【関連情報】
『舟を編む』 公式サイト<外部サイト>
『ブルーノのしあわせガイド』 公式サイト<外部サイト>
『孤独な天使たち』 公式サイト<外部サイト>