【7月9日 senken h】スクリーンを通じて、しばしば発見と学びの機会を得たりする。たとえば知られざる史実とか、実話とか。とりわけ主人公が同性の場合は、なおさら感情移入することも。今回は実在の女性3人をクローズアップした作品を紹介。

■『The Lady 引き裂かれた愛(The Lady)』

 おそらく彼女の名前を誰もが知っているであろう、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)。アジア女性初のノーベル平和賞受賞ほか、さまざまな表現をもって語られるその人を主人公に、初の映画化が実現した「The Lady 引き裂かれた愛」。強固な意思ある女性の代名詞と言っても過言ではない彼女の半生を軸に、素顔を伺い知ることができる本作は、夫の深い愛と家族の温かな絆の一端に触れる。「脚本を読んで泣いてしまった」と語るリュック・べッソン(Luc Besson)監督、そして全身全霊の女優魂を投じたミシェル・ヨー(Michelle Yeoh)。さまざまな愛が詰まった1作だ。

■『だれもがクジラを愛してる。(Big Miracle)』

 1988年、アラスカ氷河に3頭のクジラが閉じ込められているというローカルニュースが、瞬く間に全米そして世界へと報道され、人々の関心が寄せられた。職務や国籍などさまざまな垣根を越え、思いを一つに挑んだ救出劇「だれもがクジラを愛してる。」。脚本を最初に手にしたドリュー・バリモア(Drew Barrymore)が感激のあまり出演を熱望し、実在の人物にリサーチを重ね、味わい豊かにヒロインを好演。「アラスカ先住民に現地人役を演じてほしい」という監督のこだわりが功を奏し、演技経験ゼロとは思えない芸達者ぶりを披露している。

■『プリンセス・カイウラニ(Princess Ka'iulani)』

 昨今、従来とはやや趣の異なるハワイをモチーフにした映画を目にする。よりカルチャー的というのだろうか。「プリンセス・カイウラニ」もまた、ハワイをディープに知る作品だ。かのカメハメハ大王により、ハワイ王朝としての歴史を有する楽園。最後の王女が祖国のために捧げた、わずか23年の波乱に満ちた人生に、「ラブ」な味わいを添えて完成。脚本も手がけた監督のイマジネーションをかきたてた彼女の瞳の奥のロマンスとは?主演のクオリアンカ・キルヒャー(Q'Orianka Kilcher)自身も「先住民の人権を守る」活動に携わる背景も重なり、王女本人ではないかと錯覚するほど。(c)senken h / text : 宇佐美浩子