【1月24日 senken h】東京・原宿に、店の代表兼スタイリストである山口壮大(Sota Yamaguchi)さんが06年に立ち上げた、稀有なセレクトショップがある。この店がやっているのは、お金とモノの交換ではなく、ファッションを介した密な人と人のつながりから「真のファッション」を発信すること。手間もかかるし体力も使うが、時間をかけて1人1人の「今」に合ったファッションを提案し、ストリートファッションの要である個性を引き出す。

 取り扱うのは他にないクリエーション力と明確なビジョンを持った新進気鋭のドメスティックブランドと、独自の視点で選ばれた古着やアート。古着をデザイナーの手で再構築した1点モノのコラボアイテムも多い。「買い手を消費者ととらえがちですが、違うと思います。デザイナーの考え方をお客さんに伝え、お客さんからの声も大事にする。デサイナー、店、お客さんが一緒に生産に関わり、一体となってブランドを創ることが大切」と山口さん。顧客が百人単位で集まり遊ぶイベントや、限定会員とデザイナーによる少人数制イベントも行うほか、その上の「ブラックカード」会員になると、月に1度株主総会ならぬ「ブラック総会」が開かれ、同店に対する顧客の声を真摯(し)に受け止める会も開催。「面白いコトは、現場で起きています」と話してくれた。

 物足りなさを感じながら現状に甘んじてきたこれまでと閉塞感のある東京のストリートやファッションシーンを、ある種の使命感とずば抜けたセンスで変えてくれるはずだ。

◆ミキリハッシン(MIKIRI HASSIN)代表/スタイリスト山口壮大 さん <公式サイト/外部サイト>

1982年愛知県生まれ。文化服装学院卒業後、02年下北沢の古着店「NORTH」(ノース)立ち上げに加わり、スタイリストと並行しながら05年のクローズまでディレクターを努める。06年「ミキリハッシン」を下北沢にオープンし、09年原宿キャットストリート近くに拠点を移す。ミキリハッシンのオーナー&バイヤー、ファッションディレクターとして活動しながら、スタイリストとして数々の雑誌でも活躍。

◆ミキリハッシンで取り扱う注目のブランド

 ここで取り扱うのは、表現の面白さだけではなく、日常生活を考えたデザインであること、そしてデザイナーの考え方が洋服に現れているブランド。肌と布の間に空間を含む洋服が多く選ばれているため、男女を問わない自由な着こなしが楽しめる。「ポト(POTTO)」、「エス・ナカバ(S.NAKABA)」など強い個性を持つブランドの中から、今回は2つのブランドに注目したい。

■ケイスケカンダ/デザイナー:神田恵介(Keisuke Kanda)さん <公式サイト/外部サイト>

05年「アンリアレイジ(ANREALAGE)」とともに東京タワーにてコレクションを発表。06年焼き鳥屋の屋根裏部屋で単独では初となる展示会を開催後、08年より「全国ツアー」と名付けた顧客向けの受注会を開始。10年アイドル衣装的服飾レーベル「初恋てろりすと」、あの娘に捧げる民族服「心恋族」を発表。11年秋、高円寺に直営店「スナック あの娘と僕をつなぐ服」をオープン。

<プロフィール>
1976年鹿児島生まれ。早稲田大学在学中の98年に独学で服作りを始める。大学卒業後は文化服装学院に進学し、卒業後の05年秋に会社「キャンディーロック(Candyrock)」を設立。

■ファセッタズム(FACETASM)/デザイナー:落合宏理(Hiromichi Ochiai)さん <ファセッタズム 公式サイト/外部サイト>

07年秋冬からブランドコンセプトに「ユーモア オブ ポップ(HUMOR OF POP)」を掲げ、展示会形式でデビュー。10回目の発表となる12年春夏で待望のランウエーデビューを果たす。テキスタイルのほぼすべてをオリジナルで作成。さまざまなカルチャーからヒントを得たグラフィックや刺繍、インクジェットプリントを得意としている。

<プロフィール>
1977年東京生まれ。文化服装学院卒業後、テキスタイル会社、ギルドワークにて8年間勤めながら、洋服から家具、内装まで手がけるデザインチーム「エヌジーエーピー(NGAP)」でアシスタントを務める。2007年春、自身のブランド「ファセッタズム」を始動。「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012 S/S」にてランウエーデビュー。

<ショップ情報>
東京都渋谷区神宮前5の24の2 2F
URL : http://mikirihassin-tokio.com
TEL : 03・3486・7673 
営業時間 : 12:00~21:00
(c)senken h / text : 加藤陽美

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