【3月1日 MODE PRESS WATCH】3月8日(金)から全世界同時公開スタートの映画『オズ はじまりの戦い』は、作品の内容はもちろんのこと、出演陣らの豪華な衣装デザインも見所のひとつ。

 今作で衣装を手がけた、コスチューム・デザイナーのゲイリー・ジョーンズとミカエル・カッチェは、魔女、マンチキン、カドリング族、ティンカー族など、あらゆるタイプのキャラクターを約2000着にも及ぶ衣装を作り上げた。オズの国に暮らすすべての魅惑的でユニークな住人たちを様々な様相で表現している。

■手がけたのは、業界屈指のベテラン2人

 これまで数々の大作映画で衣装を手がけてきたゲイリーは、映画『スパイダーマン2』でもサムライミ監督とともに仕事をした経歴を持つ。ほかにも『バレンタインデー』、『ニューイヤーズ・イブ』、『カーラの結婚宣言』、『プリティ・プリンセス2/ロイヤル・ウェディング』、『プリティ・プリンセス』、『プリティ・ヘレン』、『幸せのルールはママが教えてくれた』などをてがけたもゲイリー・マーシャル監督をはじめ、ブライアン・デ・パルマ監督、ルイ・マル監督、シドニー・ルメット監督、ピーター・ウィアー監督、アラン・J・パクラ監督など、業界屈指の優れた監督たちと映画で衣装デザインを担当していた。

 「ミカエルの描いたデザイン画には、衣装をつけてこの映画の一場面を演じているキャラクターたちが描かれていましたが、それらは実に素晴らしいものでした。何よりも、彼はロバートが作り上げたセットデザインの環境にピッタリとフィットするビジョンで描いています。ロバートと同様に、彼もまた空想的で、彼の描いたデザイン画のキャラクターたちには生き生きとした生命が宿っていました」とサム・ライミ監督も絶賛する。

 『オズ はじまりの戦い』において、ミカエルはまず、そのキャラクターの暮らす環境や性格や社会的地位を反映させ、彼の思い描くキャラクターを「ちょっとした鉛筆の素描で数枚」描くことから始めた。そうやって具体的な形状やデザインが固まったところで、その素描をインクで描き直し、これをコンピュータにスキャンするのだ。このようにして、キャラクターがコンピュータの中に移り住めば、そこに色を入れたり、素材や込み入った衣装の装飾などをコンピュータ内で描き上げることができるのだ。

■オズの衣装

 ゲイリーは、監督のサム・ライミおよびオズ役のジェームズ・フランコと密接に話し合いながら、オズの様相を考案していった。「サムは、オズの衣服を準備するにあたって、こうしたいという明確なアイデアを持っていました。私はまた、ジェームズとも会っていますが、私とジェームズは2人とも同じ方向性を目指していました。あれは最高でしたね」(ゲイリー)

 フランコの衣装を仕立てるために行なわれたリサーチは、かつてサーカス団のリングリング・ブラザーズの仕事を手がけた過去のあるベテラン衣装デザイナーのゲイリーにとって、ノスタルジックな作業でもあった。

 「この映画のストーリーはサーカスから始まります。あれらのシーンはこの映画の中でも、より当時の時代に即して描かれている部分です。そこで私たちは最大級のサーカスから世紀末の最も貧乏でボロボロの巡業カーニバルまで、さらにはダストボウル(当時断続的に発生した砂嵐)まで、あらゆるものをリサーチしています。リサーチの対象となった時代は1880~1930年です。かつてサーカスのリングリング・ブラザーズの仕事をし、その体験を心から楽しんでいた私にとって、またもやサーカスと関わることができたことも実に最高な出来事でしたね」(ゲイリー)

 ゲイリーは、数枚のビンテージ写真とインスピレーションをたずさえて、ニューヨークのソーホーにあるカフェでジェームズ・フランコと落ち合い、19世紀末当時の写真を彼に見せた。アレクサンダー・グラハム・ベルやライト兄弟の写真も数枚ずつ入っているそれらは、すべてL・フランク・ボームが尊敬していた人物の写真だった。

■魔法使いたちの衣装

 この作品には、エヴァノラ、セオドラ、グリンダという3人のまったく質の異なる魔女たちが登場するが、彼女たちの衣装は、その性格だけでなく周囲の環境も反映させたものでなければならなかった。

 エヴァノラとセオドラの姉妹の様相について「この2人のキャラクターの衣装を新鮮な気持ちでデザインするにあたり、私はロブ(ストロンバーグ)の作画を見て、彼がイメージするオズの世界を理解することから始めました。プロダクション・デザインを衣装デザインの源泉として使った理由は、彼のデザインにはある種の理論があり、それを私のデザイン画にも反映させたいと考えたからです」とミカエルは語る。

 「エメラルド・シティの支配者であるエヴァノラの衣装デザインのスタート地点は、あのシティの建築様式を見ることでした」とミカエルは言う。「単にこの場所に暮らす人物としてではなく、彼女自身がこの場所そのものであるという描き方をしたかったのです。彼女の衣装の形や色は、アールデコからインスピレーションを受けたエメラルド・シティの建築様式や雰囲気を実際的に反映させたものです。つまり、あのシティに似せて反映させることで、他の住人たちや他の魔女たちよりも彼女を強力な存在として描いているわけです」(ミカエル)

 衣装デザインを通して、敵対する2人の魔女(エヴァノラとグリンダ)の関係を見せるためにゲイリーがとったアプローチについて、彼は次のように語っている、「この2人の魔女は、善と悪のコントラストとして、とても分かりやすく明と暗で表現しています。光る緑色を使っているのは、ロバート・ストロンバーグによるエメラルド・シティのデザインに呼応させたものです。グリンダはもちろん、基本的に純白で汚れのない女性なので、ミシェル(ウィリアムズ)演じるこのキャラクターには3種類の白いドレスまたはガウンを作り上げました」。

 エヴァノラの妹で、うっとりするほど美しく傷つきやすいセオドラが着ている衣装は、大きな縁(つば)のついたベルベットの帽子とヴィクトリア朝風の乗馬服だ。これはミカエルがデザイン画の中でこのキャラクターに生命を吹き込むために考案したものだ。

 「セオドラがこの映画に最初に登場するとき、彼女は乗馬服を着ています」とカッチェは言う、「脚本では、彼女はパンツ姿に白いブラウスを着ているということしか書かれていませんでした。それ以外のこのキャラクターの様相はすべて私が自由に発想したものです」。

 イラストレーター/デザイナーの彼は続ける、「この物語はファンタジーの世界を描いていますが、ある意味、時代モノの要素が含まれています。そこで参考として1900年代のファッションを見ていると、かなりクレイジーな帽子がいくつも出てきました。セオドラの様相は、様々な時代のものを継ぎ合わせた感じなので、具体的な時代性がありません。だからこそ、ちょっとしたファンタジー的な感覚をあたえることができたのではないでしょうか」。

■オズの国に暮らす者たちの衣装

 ゲイリー率いる、衣装、縫製、織物、染色、エージングを担当する総勢60人からなるスタッフは、主要キャストだけでなく、カドリング族、マンチキン、ティンカー族、エメラルド・シティの市民、ウィンキー族といった、オズの国に暮らすあらゆる者たちの衣装も作り上げている。

 こういった様々な種類のオズの住人たち(そのほとんどがセリフのないエキストラ)を、ベストな形で表現・定義するための形状や色使いを考案したゲイリーは、彼らの着ている衣服を通してそれぞれのグループの雰囲気を特徴づけている。アカデミー賞にノミネートされた経験を持つジョーンズと、彼の主要な共同作業者たち(アシスタント・デザイナーのジェシカ・ピール=スコットとガリ・ノイおよび衣装スーパーバイザーのジョン・キャセイ)は、針に糸を通したり布地を染めたりする前に、様々な時代のファッション・トレンドを何時間もかけてリサーチしている。ゲイリーは次のように説明する、「ロバート・ストロンバーグがセットでそうしたのと同じように、私たちは衣装を使って、あのキャラクターたちが暮らしている世界を作り上げなければならなかったのです」。

 「19世紀から20世紀への変わり目を集中的にリサーチしましたが、私たちが実際にデザインした衣装は、歴史的な観点と同時に、より現代的なものを反映させた、今日の2013年の目から見てファッショナブルで魅力のある、現代的な観点も生かされたものとなっています」(ゲイリー)

 また、オズの国のそれぞれの住人たちの雰囲気とについて、また、それに合わせた衣装の色使いについて次のように説明している。「グリンダの世界に暮らすカドリング族とマンチキンは、オズの国のハッピーな人々です。毎日普通にせっせと働く、肉屋とかパン屋とかその他のそういった種類の者たちです。比較的ハッピーで笑顔の人々なので、明るい色使いときれいな衣服で表現しました。それとは対照的に、エメラルド・シティの人々は不道徳なエヴァノラの統制下で強制的に働かされています」

 ウィンキー族について、「彼らはエメラルド・シティの宮殿を守る者たち」とゲイリーは表現している。「彼らはエヴァノラに仕える、この映画に登場する邪悪な存在のひとつです。彼らの軍服式の衣装はロシアやプロイセンの軍服からインスピレーションを受けてデザインしたものです」

 「ウィンキー族の衣装はすべて身長6フィート9インチ(約210㎝)以上の人向けに作られています」とジョーンズは付け加えている、「つまり身長7インチ(約213㎝)近い50人からなる軍隊が用意されたわけです。しかも、それでも足りないとでも言わんばかりに、この兵士たちに羽つきの帽子を被せて、およそ18~20インチ(約45~50㎝)も背丈を高く強調することをサムは私たちに求めました。この帽子はプロイセン風の雰囲気のもので、フェルトとウールと黒い玉虫色の羽で出来ています」。(c)MODE PRESS

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