【12月3日 MODE PRESS】今年も残すところあと、一ケ月。スケジュール帳が忘年会の予定で埋まり始めている頃ではないでしょうか?クリスマスや年末年始も差し迫り、街全体がイベント&祝賀ムードに包まれるようになりました。

■ボトルの中に閉じ込められていた宝石

 そんな華やかな時間を彩るのに欠かせないアイテムのひとつが、シュワシュワとした煌びやかな発泡が印象的なスパークリングワイン。その泡は「ペルル」(=真珠)と表現されるほど艶やかで、ボトルの中に閉じ込められていた宝石たちが、解き放たれた喜びと共に湧き上がっていく様は、私たちに更なる高揚感を与えてくれます。スパークリングワインには人をハッピーにさせてくれる神聖なパワーが秘められているのかもしれません。

 さて、そんなスパークリングワインの代名詞ともなっているのが、世界のワインラヴァーを魅了してやまない「シャンパーニュ」。この名称を名乗れるのは、フランスのシャンパーニュ地方の特定地域において、ぶどう品種や栽培・醸造方法の厳格な規定を満たしたものだけ。私たちもよく知る、モエ・エ・シャンドンやヴーヴ・クリコ、ローラン・ペリエ、アンリオ……といったワイン達は、様々な条件を満たしたスパークリングワインの“エリート”という訳です。

■最も罪な存在の1つ

 選ばれしブドウを用い、瓶内二次発酵という伝統的な醸造方法を経て誕生した彼らは、やはり格別の風格。きめ細やかな品のある泡が糸のように連なり、長期熟成によって生まれた香ばしいブーケが優雅に立ち上がります。そして、舌触りはシルクのようになめらかでクリーミー。凛とした酸がもたらす爽快さの後に複雑な旨みが追いかけてきて、余韻がどこまでも続きます。こうした極上スパークリングの深淵かつ魅惑的なスタイルは、世界の歴史に残る数々の女性をも虜にさせてしまうほど。マリー・アントワネットやポンパドール夫人、マリリン・モンローなど、往年の王妃からハリウッド女優に至るまでが、この煌びやかな液体を愛してやまなかったと言います。シャンパーニュはある意味、世の中で最も罪な存在の一つとも言えるでしょう。

 そうはいっても、何かと出費が多いこの季節。我々はハリウッドスターではありませんから、シャンパーニュの誘惑に毎日溺れているわけにはいきません。そこでオススメしたいのが、スパークリングワインの使い分け。今宵の宴の開催場所やコンセプト、参加者数やメンバーのタイプ……などなど様々な条件を加味して乾杯の泡を決めてみましょう。勝負ディナーや、ハズせない会だったら迷わずシャンパーニュを。でも、あえてシャンパーニュにこだわらなくても、飲んで愉しい魅力的なスパークリングワインが実はたくさん存在するのです。

■キュヴェ・マネキネコ

 では、この時期にオススメしたい個性豊かな泡たちをちょっとご紹介しましょう。
まずはフランス北東部、アルザス地方の縁起の良い『クレマン・ダルザス・“キュヴェ・マネキネコ”ブリュット(Cremant d'Alsace“Cuvee Manekineko”Brut)』から。ビオディナミを実践しているドメーヌ・クレマン・クリュールによるスパークリングワインなのですが、何と言っても、そのネーミングと、前足をちょこんと挙げた黒猫のエチケットがたまらなく愛らしいではありませんか!こちら、造り手のクリュールさんが日本を訪れた際に、招き猫に一目ぼれ(!?)したのがきっかけで生まれたそう。外見はもちろん、透き通った優しい味わいにも定評があり、来年に向けての縁起物として贈り物にも重宝しそうです。

■スパークリング・ホワイト

 次にご紹介したいのが、ドイツのワイン銘醸地ラインガウのリューデスハイム村で造られるゴールドトラウム 『スパークリング・ホワイト (GOLDTRAUM Sparkling White)』 。こちらの透明なボトルに入った液体を良くよくみてみると、キラキラと金箔が瞬いているのに気づくはず!まさに煌びやかでゴージャスな金箔入りワイン、お値段もさぞかしお高いのでは……と思いきや、これが1000円台と実にリーズナブルなのです。シトラス系のフレッシュなアロマと味わいでスイスイ飲めてしまう軽快な一本。限られた予算でゴージャス感を演出したいときやインパクトを与えたい時にピッタリです。

■真っ赤なスパークリングワイン

 そして最後の泡は、聖夜にピッタリな真っ赤なスパークリングワイン、『クカトゥー・リッジ・スパークリング・レッド(Cockatoo Ridge Sparkling Red)』です。生産国オーストラリアでは赤のスパークリングワインを日常的に嗜むそうですが、私たちにとってはちょっと珍しく、特別な気分にさせてくれます。口に含むと、泡の爽快さにタンニンがもたらすボリューム感が重なり、ふくよか且つ複雑な味わい。それでいてしつこさは全くなく、最後まで心地よくいただけます。ワインをグラスに注いだ瞬間に立ち上がる優しいピンク色の泡も、うっとりさせられる美しさ。メインのお肉料理にもしっかりマッチするので、クリスマスならではの七面鳥やローストビーフに合わせてみても良いかもしれません。

 以上3種、ちょっと楽しい泡をご紹介しましたが、本講座のテーマである「マリアージュ」について、殆ど触れませんでしたね……でも、大丈夫。スパークリングワインの強みは幅広い食事と好相性を示してくれるところ。シーンに応じた自分らしいワインセレクトができれば、もう怖いものはありません。色々なお料理とのマリアージュの可能性を模索しながら、ワインを先入観なく楽しんでください。ハレの日だってケの日だって気持ちは常にシュワっとハッピーでありたいもの――ならば是非、様々なスパークリングワインに挑戦して、その日にぴったりな一本を見つけてみてはいかがでしょうか?【瀬川あずさ】

プロフィール:
聖心女子大学卒業後、施工会社の秘書を務め、飲食店の企画、設計、施工業務に携わりながら、レストラン巡りに没頭する。その後趣味が高じて、フードアナリ ストならびにワインエキスパート資格を取得。現在は、記者・ライター業、ワインスクール講師、飲食店メニュー開発などを務め、食を通じた豊かなライフスタ イルを提案するべく活動中。
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