【4月23日 MODE PRESS WATCH】1956年の創設以来、数多くの著名デザイナーを輩出してきたファッションコンテスト「装苑賞」の第87回公開審査会が23日、東京・新宿にある文化学園で開催された。日本を代表するデザイナーたちが審査員として見守るなか、二次審査を通過した16組の候補者がショー形式で作品を発表。“美数値空間”をテーマに3体のルックを披露した桑原啓(Akira Kuwabara)が見事グランプリの「装苑賞」を獲得した。桑原は、同じく候補者に残った近藤晃裕(Akihiro Kondo)とのデュオとして発表した作品でも「佳作2位」を受賞した。

■小さな三角形を組み合わせて・・・

 桑原は今回、以前から興味を持っていた過去の文明からインスピレーションを得て、塩化ビニールの小さな三角形を無数に組み合わせた服を制作。「着る人やその周りの人の人生を変える服で、服を取り巻く空間をもファッションにする」という壮大な想いを、3体の作品で表現した。緻密かつ構築的でありながら、女性の身体に沿ったデザインやカラーグラデーションで流れを表現した完成度の高い作品。審査員の評価も高く、グランプリ受賞に至った。
 
 審査員コメントでは「上位3位はとても完成度が高かったが、グランプリ(装苑賞)の作品は群を抜いていた。アイデアは珍しいわけではないが、美しい宝石に通じるような説得力のある美しさが感じられた」と岩谷俊和(Toshikazu Iwaya)。コシノジュンコ(Junko Koshino)は「着心地の良い悪い以前に、思うことを表現するのがとても素敵なこと。小さなものを大きく表現するというバランス、流れが良かった」と絶賛した。
 
 「ここからの景色を眺めるのがひとつの目標だったので、とても嬉しい」と喜びを語る桑原には、賞状とトロフィー、賞金100万円、シャンブル・サンディカル・ドゥ・ラ・クチュール・パリジェンヌ洋裁学校への留学権に加え、副賞として合同展示会roomsLINKへのブース出展権とスワロフスキーによる素材提供などが与えられた。

■その他受賞者

 佳作1位は、「森にある木が鳥になって飛び立つ」というポエティックなコンセプトで、森のプリント柄やフェイクファー、木材を使った作品を披露した長元春恵(Harue Nagamoto)。佳作2位は、今回グランプリを受賞した桑原と近藤晃裕(Akihiro Kondo)がコラボレーションした作品が選ばれた。

 そのほか、柔らかな色のオーガンジーを立体的にデザインしたかわいらしい作品を発表したロシア出身のヴェセロヴァ・ビクトリアがイトキン賞を受賞。立体的なフォルムやドレープが光る作品を発表した萩原和紗がルームス賞に選ばれた。(c)MODE PRESS