【7月6日 MODE PRESS】7月26日、フランスのマリ・クレール グループ(marie claire group)は日本で「マリ・クレール スタイル(marie claire style)」を創刊する。今から遡ること約30年、インターナショナルマガジンの草分け的存在として日本で創刊された「マリ・クレール ジャポン」は、その後、さまざまな局面と時代背景を経て、2012年夏、あらたに「マリ・クレール スタイル」として生まれ変わる。これまで、雑誌という枠に留まらず、衣食住に関わる“ライフスタイルブランド”として「マリ・クレール(marie claire)」が日本市場において大きく成功を収めてきたことは周知の事実だろう。アパレルはもちろんのこと、バッグやアクセサリー、ホームコレクション、ゴルフ用品など、我々の生活になんらかのカタチで浸透している。グローバルに発行するマガジンブランドとして現在世界34か国で発行されている一方で、プロダクツブランドとしても世界中で成功を収めているその秘訣を、先日、プロダクツの全監修を指揮しているパトリシア・V・ボーソレイユ(PATRICIA V.BEAUSOLEIL)氏が来日した際に、詳しく聞いた。

インタビュー:パトリシア・V・ボーソレイユ(「マリ・クレール」ブランドコンサルティング)

-商品開発のための世界共通のガイドライン

 現在は自分の会社(ユニバース モード:UNIVERS MODE)でマリ・クレールブランドすべてのプロダクツに関するコンサルティングをしており、25年前からこの仕事に関わっています。マリ・クレールのライセンスが日本で始まった初期の頃にはじまり、本当に長い間、日本の市場を見てきました。

 「マリ・クレール」には、雑誌とプロダクツの2つのライセンスビジネスがありますが、私は後者に関する仕事をしています。各国のライセンシーとの円滑なリレーションとスムーズな仕事を図るために、毎年、「トレンドブック」を作成し提供しています。これはいわば、全てのジャンルに関する“ガイドライン”のようなものです。国によって、文化や風土、好みの色やテイストが大きく異なるため、どのようなタイプにも当てはまるよう、対極にあるトレンドを必ず2つ提案しています。レディス・メンズ、アパレル、アクセサリー、バッグ、シューズ、アイウェア、テキスタイル、家具、キッチン用品、ゴルフ用品・・・すべての製品に関する“ブック”です。デザイナーもそれぞれに担当者をつけ、カバーしています。

 そのシーズン、世の中のトレンドをどのようにマリ・クレールは商品に落とし込んでいくのか、トレンドブックを軸に各国のライセンシーが自分たちの市場にあった商品開発を行います。なぜ今シーズンはこのテーマなのか、イメージがしやすいようなストーリーボードやカラーチャートなどによって、わかりやすく示しています。いわゆる“ファッション大好き人間”でなくても、トレンドをよりわかりやすく理解してもらえる、現実的な落とし込みをしています。

-1シーズンに180冊のブック作成

 毎シーズン気をつけていることは、マリ・クレールブランドで最も重要な“エレガントさ”を失わないこと。続いて重要なことは、デザインにおいてのコンテンポラリー性、そして人々に身近な存在であると感じて貰えるかどうか。強すぎず、程よく柔らかいスタイルがブランドの特徴です。ディテールとしてなにを取り入れるのか、艶感のある白やゴールドの取り入れ方やスタッズの使い方、大きめのゴールドチェーンをデザインにどう落とし込むか、サングラスにグリッターをどのように取り入れるのか、メタリックな素材をどうトレンドを咀嚼して商品に反映させるか。デキスタイルも毎シーズン、ライセンシーが使いやすいものを提案しています。毎シーズン、トレンドブック以外にもランジェリーやジュエリー、アイウェアなど各ジャンルのブックも含め全部で180種類の“ブック”をつくっています。ライセンシーにマリ・クレールブランドとはなんなのか、これらを見ればすべてが理解できます。

-クオリティコントロール

 スーツや靴下、シャツ、ワンピース、アイウェア、ニットなどをはじめとする全カテゴリーをカバーし、さらにはそのすべてがメンズ・レディスに分かれているため180冊もの膨大なブックが完成します。ヨーロッパでは、「MCマリ・クリール」というヤング向けブランドもありますし、日本ではマスマーケット用のトレンドブックも作成しています。この膨大な量の仕事を現在、フルタイムスタッフ10人とフリーランス10人の合計20人のスタッフで対応しています。すべてのライセンシーを集めた会議にも出席し、世界中からあがってくるプロダクツ申請の資料に目を通し、クオリティコントロールも含め我々の会社で管理しています。

-日本で生き抜いてきたブランド

 現在、「マリ・クレール」ブランドは、日本以外に中国、台湾、韓国、オーストラリア、アメリカ、ヨーロッパで展開しており、非常に巨大なライセンスビジネスです。日本はメインマーケットで、次いで韓国、オーストラリアと続きます。

 “マガジン”と“プロダクツ”という全く異なった分野において、ひとつのブランドが共に成功している例は、世界中探してもマリ・クレール以外になかなかないと思います。我々が作っているガイドラインこそが、そのカギということです。このガイドラインがないと、世界中のライセンシーはなにをつくっていいのかもわからず、ブランドコントロールもできません。マリ・クレール グループは、ブランドを守るために必要なことを十分理解した上でこのようにワールドワイドにライセンスビジネスを展開しているのです。これは、シビアな日本市場で「マリ・クレール」ブランドが生き残ってきた大きな要因でしょうね。【岩田奈那】(c)MODE PRESS