【6月22日 MODE PRESS】今年ブランド創立25周年を迎えたジュエリーデザイナーのアレックス・モンロー(ALEX MONROE)が、スペシャルコレクション[25PIECES FOR 25YEARS]を発売した。これまで25年間に作ったコレクションのなかから、デザイナー自身がその1年を象徴するアイテムを1点ずつセレクト。アーカイブピースそのものを用いるのではなく、デザインをアップデートし、今の時代にフィットした25ピースから構成されるスペシャルコレクションだ。

 「アレックス・モンロー」を語る上で欠かせないキーワードは、“自然”といっていいだろう。イギリス南東部のサフォーク州で生まれ育った彼は、まさに大自然に囲まれて17年間を過ごした。植物や花、昆虫、動物などアレックスがジュエリーデザインに落とし込むモチーフは様々だ。繊細でロマンティックなジュエリーから紡ぎ出されるストーリーは、まるで子供の頃に読んだ絵本のなかに迷い込んだかのような感覚に陥る。テントウムシや小鳥たちがささやく言葉が聞こえてきそうなデザインは、身につけた人の心を無意識に解き放ち、懐かしい思い出や風景を思い起こさせる。

■インタビュー:アレックス・モンロー(ジュエリーデザイナー)

-25個の25周年コレクション

 毎年200種類ほどのコレクションを作っていますが、そのなかから“1つ”を選ぶのはとても難しい作業でした。いつもスケッチをしてサンプルをつくって箱にいれておくのですが、今回はその中から見つけ出したものもあります。新しくデザインしたもの、過去のコレクションからリデザインしたもの、今まで日の目を見ずにアトリエにあったもの、今回のコレクションはその3つから構成されています。

 “2008年”に選んだモチーフは、ミツバチです。それまでイギリスより日本のほうで僕のブランドは人気がありました。しかしこれを発表したシーズン、ミツバチのモチーフを発表したところ、日本同様イギリスでもブランドが浸透しました。“1991年”に選んだのはIDブレスレットです。当時はチェーンが太く大ぶりなデザインでしたが、今回はより今っぽく繊細でロマンティックに仕上げました。“1997年”のVerityは、長女が産まれた年につくったネックレス(娘の名前がVerity、真実(Truth)という意味)。“2009年”のモチーフは、スイスの山登りをしていた時にスケッチしていた中から選んだマッシュルーム。“1993年”のイヤリングは、母のためにつくったひまわりモチーフ。どのモチーフにも思い出がいっぱいあります。でも身につける人の思いと相まって新たなストーリーを紡ぎ出す。買う人自身の思いや思い出を持って身につけて貰えるのがいいですね。

-自然に惹かれる理由とその魅力

 17年間、イギリスの田舎で生まれ育ちました。幼い頃からロンドンへの憧れが強く、行きたいと思い続けていて、実際、18歳からロンドンで学生をしていたので楽しい時を過ごしました。けれど、ふとしたときに思い出すのはいつも自分が育った田舎の風景だった。“自然”のモチーフは、自分が作りたいものを伝える手段としてとてもわかりやすいモチーフです。数年前、ロンドンにある自宅の庭に咲いていたフリティラリフラワー(網笠百合)を子供達が香水を作ると言って全部花を獲ってしまったことがありました。育てるのが難しい品種なので、そこから蘇らせるまでとても時間がかかった。やっと蕾をつけてくれたのが2011年のことで、その年に日本では東北大地震が起こった。さまざまな想い、希望や復興へのメッセージに込めたくて、フィリティラリフラワーのモチーフをデザインに取り入れました。言葉だけでは伝わらない深みやメッセージが自然のものを通して伝えられるという点がとても好きです。

-“変わらない”こと

 今はデザイン以外にもやることが沢山あって、会社も経営している。ついヨーロッパ的な考えだとビジネスを大きくしたりとなりがちですが、その反面、日本はクオリティを重視してくれる。自分も作ることにこだわって仕事をしていきたい。僕にとって何よりも大事なことは、ジュエリーをデザインしているということです。子供の頃から伝えたいことがあるときは、モノを作ってきました。なにか伝えたいことがあるから、僕はジュエリーを作っている。今やっていることは、自分が子供の頃からやっていることと変わらない。僕がこだわっていることは、変わらないこと。つまりデザインするということやクオリティが変わらないということ。これからの25年もそうありたいと思っています。(c)MODE PRESS