【5月29日 MODE PRESS】グッドイヤー製法やベンチメイドなどメンズシューズでお馴染みのトラディショナルな要素と女性らしい気まぐれな感性をミックスし、“あるようでなかった靴”を生み出すデザイナー、アンジェラ・スコット(Angela Scott)。彼女のシューズブランド「ザ オフィス オブ アンジェラ スコット(The Office Of Angela Scott)」は11/12年秋冬シーズンにデビューし、2シーズン目の12年春夏コレクションから日本で販売をスタートした。次の秋冬ではさらに取扱い店舗を拡大するなど好調に展開している。5月中旬、トランクショーのために3度目となる来日を果たしたアンジェラに話を聞いた。

-服やバッグでなく、なぜシューズデザイナーに?

 家具職人だった祖父の影響が大きいです。祖父はハンドメイドの靴やビスポークの服をたくさん持っていて、私にクオリティの大切さやクラフツマンシップについて教えてくれました。私自身も靴が大好きで、周りから“ユニークな靴の持ち主”と言われていました。祖父が亡くなり、年を重ねていく中で“靴づくり”が自分の夢となり、それを少しずつ形にしてきました。

-女性にとっての靴の魅力は何だと思いますか?

 靴は、女性の外見も内面も変える不思議な力を持っている。良い靴を履くと、素敵に見えるだけでなく、その日一日の気分も良くなります。たった一つのアクセサリーなのに、女性をセクシーな気分や楽しい気分にしたり、自信をも与えてくれる。ハンドバッグも同じですが、女性に“パワーを与えてくれる”ものだと思います。男性にとっての車や時計みたいなものです。私たちが作る靴は、言わば“フェラーリ”なんです。

-影響を受けたデザイナーは?

 とても多くのデザイナーから影響を受けています。デザイナーはそもそも、人々にインスピレーションを与える存在ですからね。ジュンヤ・ワタナベ(Junya Watanabe)やコムデギャルソン(COMME DES GARCONS)など日本のデザイナーも好きですし、アズディン・アライア(Azzedine Alaia)やセリーヌ(Celine)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)も好きです。いち女性デザイナーとして、成功している女性デザイナーは特に尊敬し、同時に刺激を受けています。ファッション業界は、女性の服も靴も男性デザイナーが多く、もっと女性デザイナーが増えたらいいのにと思っています。

-デザインの工程で最も興奮する瞬間は?

 アイデアを思いついたときです!例えば、ニューヨークで壁に描かれたグラフィティを見たり歩く人を眺めたり・・・さまざまな物事からインスピレーションを得てアイデアが浮かんだときに、とても興奮します。『紙を探して描かなくちゃ!』と。それらいくつものアイデアをブックに収めていて、その中からピックアップして靴に反映しています。2年前のアイデアや1ヶ月前のアイデアが靴へ変わる。そしてそれを実際に履いている人を見るのは最高の瞬間ですね。

-ファッションのこだわりを教えてください

 フェミニンとマスキュリンなスタイルが好きで、ガーリー過ぎる格好はしません。女性らしいスタイルにはタイをプラスするなど、テイストをミックスして楽しんでいます。兄3人と一緒に育ったので、昔は彼らと同じような格好をしたがっていました。母はドレスをたくさん用意してくれましたが、『ケーキみたいな格好はしたくない!』とパンツを履いていました。いまはイブニングなどシーンにあわせてフェミニンやロマンティックな格好もしますが、大抵どこかにマスキュリンな要素を入れています。それが私らしいスタイルです。

-日本のファッションをどう思われますか?

 色々な国へ行ったことがありますが、日本のファッションシーンは独特でとても刺激を受けます。ファッションは個人的なものであり、日本人はそれを全うしている。若い人からお年寄りまで、街には自分のスタイルを持った人が溢れています。服も小物もヘアメイクもネイルも・・・まさに、頭からつま先まで気を配っている。“自分を素敵に見せること”への熱心さを感じます。それに比べてカリフォルニアやニューヨークは、ジーンズにTシャツなどもっとシンプルでラフですね。

-今後のコレクションについて教えてください

 12/13年秋冬コレクションは、クラシックなデザインに私なりのパンクロックをミックスしました。クラシックな時代に影響をうけ、そこに少しエッジを効かせるためにスタッズなどを使いました。私は13歳~15歳の頃、スタッズづくめの服に大量のピアスを着けるようなスタイルをしていたのですが、それを思い出させるようなコレクションです。

 13年春夏は、ペールピンクやヌードなどニュートラルなカラーパレットが特徴です。とてもソフトな色だけど、デザインで遊んでいます。また、今後メンズシューズの展開も考えています。要望に応える形で3~4型の小さなコレクションになる予定ですが、カラフルではないけれど遊び心を感じさせるデザインに仕上げるつもりです。(c)MODE PRESS

【関連情報】
ザ オフィス オブ アンジェラ スコット 公式サイト