【1月25日 AFP】ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が、人種差別的な発言をしたとして「クリスチャン ディオール(Christian Dior)」を解雇されてから、約10か月が経過した。ディオールは未だ後任デザイナーの名を発表していない。売り上げは順調だが、全ての指揮を執るクリエイティブ・ディレクター抜きでどこまで現状を保てるのだろうか。

■後任探しには「時間が必要」

 ガリアーノは、昨年2月に人種差別的な発言が問題となり、「ディオール」を解雇された。その後は、ガリアーノの右腕だったビル・ゲイテン (Bill Gaytten)率いるデザイン・チームが、ディオールの象徴的なスタイルを取り入れたクラシックなコレクションを発表してきた。

 ディオールのシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)CEOは、昨年9月にパリで12年春夏コレクションを発表した際、「後任にふさわしい人物を見つけるには、時間がかかるでしょう」とコメントした。

■当面の間は大丈夫…?

 ファッション史を研究するリディア・カミチス(Lydia Kamitsis)は、ディオールはガリアーノが去った今も「これまでに彼がディオールにもたらした作品やブランドイメージ、アーティスティックな方向性から、ブランドを維持できている」と考える。とは言うものの、アーティスティックな方向付け無しに「ブランドを永遠に持続させることは不可能」と警告。特に厳しいのは、オートクチュール・コレクションだ。

 シャネルは1971年にココ・シャネル(Coco Chanel)が亡くなった後も、順調なペースでスーツを販売していたが、12年後の1983年にその後を継ぐカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が現われるまでは、行き詰まりの状況が続いた。

■ブランドの“原動力”

 ラグジュアリー・ビジネス専門家でパリ政治学院教授のセルジュ・カレイラ(Serge Carreira)は当分の間は、中国をはじめとした各地域でのグローバルな成長や「2000年半ばからの新たなポジショニングの効果で」ブランドは利益を得ることができるだろうと考える。「ブランドの“原動力”は、ガリアーノが去る前にきちんとたくわえられていた」とカレイラ。しかし「それには限界がある。ブランドは定期的に刷新されなければならない」と警告する。

 ガリアーノが残した“原動力”として、アイコンバッグ「レディ ディオール(Lady Dior)」や、世界で最も人気がある香水のひとつ「ディオール ジャドール(Dior J'adore)」の存在が挙げられる。

■デザイナー不在を「チャンス」に

 仏ファッション・インスティテュート(French Fashion Institute)のパトリシア・ロマテット(Patricia Romatet)は「ディオールの強みは、多様性」だと考える。「ブランドの多様性は、高い専門性を持った影の仕事人が、ビジネスの繁栄を支えていること を示している」とロマテット。

 キャンペーンモデルの顔ぶれをみても、“グラマラスな魅力と究極のフェミニティ”を表すシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、“より共感できるフェミンさ”を持つナタリー・ポートマン(Natalie Portman)、“上品さと洗練されたフレンチテイスト”を持つマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、“若さ”を体現するミラ・クニス(Mila Kunis)と、さまざまなタイプの女優を起用している。

 さらに「デザイナーの不在」こそが、今後より強固なブランドとして浮上するきっかけになりえる、と指摘。「このブランク期間は、新たな方向性を見つけ、スタートを切るチャンスでもあります」と語った。

■姿をひそめるガリアーノ

 現在は、ベルギー出身デザイナーのラフ・シモンズ(Raf Simons)がガリアーノの後任デザイナーの最有力候補として取り上げられている。

 一方ガリアーノは、彼を捕らえようとするパパラッチたちの努力も虚しく、姿をひそめたままだ。昨年6月にパリで行われた初公判には姿を見せたが、9月の判決には姿を現さなかった。(c)AFP

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