【6月6日 AFP】仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」の展覧会「Louis Vuitton Voyages」が、5月31日から中国・北京の天安門広場(Tiananmen Square)に隣接する中国国家博物館(National Museum of China)で開催されている。

 会場には、ケースに飾られたルイ・ヴィトンのトランクやハンドバッグがずらりと並ぶ。博物館の他のスペースに展示されている歴史的な銅器や磁器とは極めて対照的な光景だ。

■優勢性を確固たるものに

 中国の高級品市場は、世界で最も急激な成長を遂げている。中でも、ルイ・ヴィトンは富裕層にとって既になじみ深いブランドのひとつだ。専門家は、ブランド側には、今回北京で開催される展覧会を通じ「さらに中国の高級品市場での優勢性を確固たるものにする」狙いがあると分析する。

 上海のマーケティング&コンサルティング会社DDMAData Driven Marketing Asia)のSam Mulliganディレクターは「ルイ・ヴィトンの展覧会は、とても賢い方法です。展覧会は、ブランドの歴史と伝統、長年にわたるビジネスを示唆します。 その全てが、中国市場で重要視される要素です」と語る。

■洗練された、教養ある消費者に

 中国国内では、博物館や美術館、アートギャラリー、映画祭といった場で、高級商品を展示するプロモーション方法が増加傾向にある。より洗練された、教養ある消費者にブランドの魅力を訴えることが狙いだ。

 チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(China Market Research Group)のショーン・レイン(Shaun Rein)マネジング・ディレクターは、「ルイ・ヴィトンの消費者は、長年受け継がれてきた伝統のあるブランドを買うことにとても興味があります。だからこそ、中国国家博物館と組んだルイ・ヴィトンはとても賢明だったと思います」とコメントする。

 今春には、米ファッションブランド「ダイアン フォン ファステンバーグ(Diane Von Furstenberg)」が「ドレスの旅(Journey of a Dress)」と名付けた展覧会を、北京で注目されるアートエリア「798芸術区(798 Art District)」で開き、話題となった。

■今後5年が最大の難局

 コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers)は、2015年には中国がファッションや化粧品、腕時計などの商品の最大購入国になると予想。しかし、レイン氏は「ブランドへの忠誠心は移ろいやすいだろう」という。「今はルイ・ヴィトンが優勢です。しかし、人々が2つめ、そして3つめの高級ハンドバッグを購入しはじめる今後5年が最大の難局になるでしょう」 「もし既にルイ・ヴィトンやグッチのバッグを購入済みだとしたら、もう一度同じブランドを買いますか?それとも、違うブランドに挑戦してみますか?」

■展覧会へのリアクション

 博物館のChen Lusheng副館長は、中国共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)のウェブサイト上で「今回の展覧会によって、国内の文化デザイン業界を啓発したい」と語る。しかし、人民日報は「商業的になり過ぎている」 「国立博物館は、敷居を高くし、より厳密に展示の選択をすべきではないか?」と批評する。

 一方、来場者の反応は上々だ。18歳の娘と共に展覧会を訪れたHuang Chenさんは、「今回の展覧会は中国の消費者がより高級ブランドの歴史を理解するきっかけになり、売上増加に繋がるのではないでしょうか。若い人も、ルイ・ヴィトンが主要なブランドになった理由を理解すると思います」と語る。実際に、Chenさんは現在ルイ・ヴィトンのバッグ2個を所有している が「品質も良く、便利。他のバッグよりも、使いやすい」とお気に入りの様子だ。また、学生のWang Jingさんは「バッグの全体的な雰囲気が好き。外見はすっきりしているけれど、内側のディティールは凝っています。ひとつ買いたいと思います」とコメントした。

 展覧会「Louis Vuitton Voyages」は5月31日から8月30日まで約3か月間にわたり開催される。(c)AFP/Allison Jackson

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