【4月3日 AFP】ホーチミンに住むDiep Bach Duong氏は1980年代初頭、共産党時代のベトナムでわずかな収入のために役人として働いていていた。その彼女は現在、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のバッグを手にし、ロールスロイス(Rolls-Royce)を乗り回している。

■台頭する新富裕層

 いまだ多くの人々が1日数ドルの暮らしをしているベトナムで、Duong氏は新富裕層の仲間入りを果たした。「国のために働いていた時、チャンスは本当に限られていました」。1980年半ばに政府の役人としての仕事を辞め、すぐに不動産業を始めた。

 顧客には、同じく新富裕層の人々が多い。職業や年齢は様々だ。「ビジネスマンもいれば、若い世代の金持ちの方もいます」

■街に並ぶ高級ブランドの店舗

 彼女の成功は典型的な例ではないかもしれないが、2007年ベトナムの経済成長は8.5パーセントの伸びを見せた。今では、“大金持ち”も珍しくはない。

 ベトナム人1人あたりのGDPは900ドル(約9万2000円)以下というのにも関わらず、ホーチミンとハノ(Hanoi)どちらの都市にも高級ブランドのブティックや化粧品、革製品の店が溢れている。

 Duong氏も。昨年ホーチミンにルイ・ヴィトンのブティックがオープンした際は、鞄や傘、スーツケースなど3万ドル(約300万円)分の買い物をしたという。

■高級車の売上げも好調

 ドイツの高級車ポルシェ(Porsche)のオフィスをベトナムに開いたばかりのAndreas Klingler氏は、マーケットは大変小さいが「ベトナムには、他のアジアの国のように沢山の富裕層がいる」と語る。「私達はここに、長期間続く可能性を見越して来たのです」。

 Klingler氏によると、顧客の年齢層は20-60歳だという。車の値段は税金のため欧州の2倍になるにもかかわらず、2007年11月以降にスポーツカー15台以上が売れたという。

 「ベトナム人は高級品を買い、自分たちの富をアピールすることを恥ずかしいと思っていません。ポルシェだけじゃなく、ロールスロイスやベントレー(Bentley)なども揃っています」

■今後さらに成長の可能性

 国連開発計画(UN Development ProgrammeUNDP)のエコノミスト、Jonathan Pincus氏は「アジアの他の国でも同じような変化を見てきた。平均収入が比較的低くても、一部の人々は金を持っていて、それを使うのを楽しんでいるという状態です」と語る。

「この地域全体に共通しているのは、人々の調子が良い時に高級品が売れるという傾向です。生産者はそれを熟知し、アジアで新たに経済成長が見られる国があれば、ビジネスチャンスを逃さず、すぐに進出してくる。ベトナム経済はさらに上昇の可能性があるということが見て取れますよ」(c)AFP/Aude Genet