【4月2日 MODE PRESS】62年のデビュー以来、今なおトップミュージシャンとして新たなファンを獲得し続けているボブ・ディラン(Bob Dylan)。その人生を、6人の俳優と6つの人格で表現した映画『アイム・ノット・ゼア(I’m Not There)』が4月末から公開される。第64回ヴェネツィア映画祭審査員特別賞に輝いた本作は、『ベルベット・ゴールドマイン』『エデンより彼方に』で知られるトッド・ヘインズ(Todd Haynes)監督による渾身の一作だ。

■複数の人格で構成する伝記

 ディランは45年間に渡り、自らのイメージの破壊と再生を繰り返してきた。劇中の6つの人格は、彼の人生におけるそれぞれのステージや、性格の一部を基に作り上げられている。ドキュメンタリー形式をとらず、虚構の人格にディランを投影することで「ボブ・ディラン」像の再構築を試みる大胆な手法だ。

■豪華キャストが6人のディランを熱演

 デビュー前のディランらしき少年をマーカス・カール・フランクリン(Marcus Carl Franklin)、60年代初頭のプロテスト・フォークシンガー時代をクリスチャン・ベイル(Christian Bale)、65年にロックへと転身した姿を女優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)、元妻や恋人との関係に苛立つ姿をヒース・レジャー(Heath Ledger)が演じる。さらに、ディランの精神世界の一部を切り取ったような人物に、ベン・ウィショウ(Ben Whishaw)とリチャード・ギア(Richard Gere)が扮した。

 ディランを知れば知ろうとするほど響く、「アイム・ノット・ゼア=私はそこにいない」という声。錯綜する物語と音楽に身をゆだね、スクリーンに漂うボブ・ディランの気配を感じてみたい。(c)MODE PRESS
 
公開情報:4月26日より、シネマライズ・シネカノン有楽町二丁目他全国ロードショー


<キャスト>
・ウディ(マーカス・カール・フランクリン)
 フォーク・シンガー「ウディ・ガスリー」の名を語り、ギター1本でアメリカを放浪する黒人少年は、他人の曲をコピーし、自分自身の音楽を模索していたデビュー前のディラン。

・シンガーのジャックとジョン牧師(クリスチャン・ベイル)
 60年代初頭のプロテスト・フォークで華々しくデビューした頃と、70年代後半~80年代前半に聖書に傾倒していた頃のディラン。当時親しかった人気フォーク・シンガー、ジョーン・バエズ役にジュリアン・ムーアも登場。

・アルチュール(ベン・ウィショウ)
 19世紀フランスの詩人「アルチュール・ランボー」を名乗る男は、インタビュー時に難解な受け答えで記者を煙にまいていた65年頃のディラン。

・ロビー(ヒース・レジャー)
 フランス人女性クレア(シャルロット・ゲンズブール)と冷めた結婚生活を送る俳優の物語は、ディランと2人の女性(恋人のスージー・ロトロと元妻のサラ)との恋愛関係が下敷きになっている。ヒースは残念なことに08年1月に急逝。

・ジュード(ケイト・ブランシェット)
 ロックバンドを率いドラッグにふけるスターは、65年~66年頃、フォークと決別しロック・ミュージシャンへ転身したディランの分身。ブランシェットは本作で第64回ヴェネツィア映画祭最優秀女優賞を受賞した。

・ビリー(リチャード・ギア)
 西部開拓時代のアウトローに、66年のバイク事故後に隠遁生活を送るディランを重ねた。