【ストックホルム/スウェーデン 18日 AFP】スウェーデンの人気アパレルメーカー「H&M」が今年で60周年を迎える。記念すべき9月15日にはパーティー・イベントの予定はなく、代わりチャリティーとして、衣服の不足している貧しい国の人々に対して650万ユーロの寄付が行われた。

■1947年に慎ましくスタート

 H&Mは1947年にスウェーデン西部の小さな町ヴェステローズで慎ましく始まった。現在では28カ国1400店舗以上を抱える巨大アパレル企業として、若者層に絶大な人気を誇り、業界でもリーダー的な存在を築いている。

 ブランド理念は実にシンプル。ファッショナブルなデザインを安く生産し、各都市に合わせた商品計画、更に店舗に在庫を補充し続け、品切れのない状態を作ることだ。

 ブランドの強みは何と言ってもファッション性の高さと価格の低さ。最近ではセレブや有名デザイナーとのコラボレーションを行い、安価で手の届き易いリミテッド・エディションが人気だ。

■数々のヒットコラボ商品

 カイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)、マドンナ(Madonna)、シャネル(Chanel)のデザイナーカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などとのコラボレーション企画では、開店数時間で完
売となる記録を打ち出した。

 フランスモード研究所(IFM)のフローランス・ミュラー教授は「H&Mは一衣料小売店からファッションブランドへとシフトして行きました。今後もH&Mの店舗と競合企業は増えて行くでしょう。現在ではシーズンのトレンドがH&Mに行けば一目で確認できる。まさに、業界のリーダー的な地位を確立したのです」と説明する。

■弛まぬ企業理念

 昨年度の売上は8億6000万ユーロ(11億9000万ドル)に達し、スペインのZARAをわずかに抜いた。更に競合ブランドにはアメリカのGAP、スペインのMANGOなどが並ぶ。

 H&Mのスポークスマンであるクリスティナ・ステンヴィンケルさんは「H&Mの基本理念はファッションとクオリティーがベストプライスで提供できることです」と語る。

 「今日、60周年を迎えるH&Mは100人のデザイナーを抱える巨大企業でもあり、世界中のデザイナー達が我々とのコラボ企画を心待ちにして行列が出来ているんです」とクリスティナさん。

■低下する衣服購買の割合

 フランス・ペルピニョン大学のファッション社会学学科教授フレデリック・モネロン氏は「H&Mのような低コストのファッションチェーンの出現は、購買トレンドとリンクしています」と解く。更に「彼らの成功の秘訣は、低価格を更に下げたことにあります。消費者は収入の中で衣服にかける割合が年々低下しているのです」と語る。

 ヨーロッパでは1995年に収入の中で衣服購買の割合が6.8%であったが、2005年には5.8%にまで低下していることが欧州統計局の調査で明らかになっている。(c)AFP