【ベルリン/ドイツ 16日 AFP】第57回ベルリン国際映画祭(The 57th Berlin International Film Festival)で、デザイナーのイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent) に関するドキュメンタリー映画が公開された。なお同作品は、フランスでは上映禁止となっている。

 イヴ・サンローランは、女性用タキシードやピーコート、薄手のシフォンブラウスなど数々の画期的なアイデアを生み出した。彼は2002年にファッション界に別れを告げ、44年間にわたるデザイナー活動に終止符を打つ。最後のショー会場では、カトリーヌ・ドヌーヴ(Catherine Deneuve)が歌声を披露し、フロントローでは著名人や歴代のミューズたちが涙ぐんだ。

■問題作の内容とは?

 しかし、オリビエ・メイロー(Olivier Meyrou)監督作品『Celebration』が映し出すサンローランの姿は、イメージ通りの輝かしい姿とはだいぶ違うものだ。関係者の話によると、彼は鋭いまなざしをだいぶ前から失っていたようだ。靴はきちんとフィットせず、銀色のドレスと灰色を取り違える。そんな仕立て師たちのうわさ話や、スタッフ達がモデルの着るドレスについて「彼女の胸は、あのドレスには大きすぎるわよ」などと話し合っているシーンも収録されている。

■ビジネスパートナーのコメントも収録

 ニューヨークで行われたインタビューでは、厳格な人物として有名だったサンローランが「喜びとともに、楽しんで働く」と話す姿が納められている。しかし、彼の長いビジネスパートナーだったピエール・ベルジェ(Pierre Berge)は、同じインタビュアーに対し、発言のような状況は一度もなく、デザイナー自身もそれを望まなかったと語った。

 「彼はいつも幸せそうでなく、苦々しい表情をしていた。まるで夢遊病者のようだった。でも我々はあえて彼をしゃきっとさせず、トランス状態を保たせるようにしていた」とベルジェ。

■完成から6年経過…ベルリンで遂に公開

 映画が2001年に完成したとき、ベルジェは配給中止をフランスの裁判所に訴えた。メイロー監督は、配給中止だけでなく罰金も科されたという。彼が過去に制作したドキュメンタリー作品には、同性愛社会での差別などもテーマに含まれている。

 「サンローランの秘められた生活をみせたかった」というドキュメンタリーには、パリで同ブランドが居を構える地名から『5 Avenue Manceau』という原題がつけられている。「サンローランは非常にユニークな芸術家だった。しかし、彼の内面や暮らしといったものは謎につつまれている」とメイロー監督。このドキュメンタリー作品は、日曜日まで開催されるベルリン国際映画祭でフルスクリーン上映される。写真は2002年1月7日、フランス・パリにて撮影。(c)AFP/ ERIC FEFERBERG