【9月27日 AFP】人気児童小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズの作者J・K・ローリング(JK Rowling)氏が初めて大人向けに書いた小説「The Casual Vacancy」が27日、発売される。 

 この新作は、イングランド南西部の架空の田舎町パグフォード(Pagford)を舞台としたダークコメディー小説。美しいこの町で、教区議員が急死したことからさまざまな争いが勃発するというあらすじだ。詳しい内容は発売日まで極秘とされてきたが、既に発売前から100万冊もの予約が殺到。今年の英国フィクション小説部門でベストセラーとなるのは確実と見られている。

 発売に先駆けて27日の英各紙に掲載された書評は、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)を思わせる社会的示唆に富んだ小説だという好評から、粗雑でみだらな物語で「魔法学校」の世界からは程遠いとの酷評まで、大きく割れた。

 評者の多くは、セックスやドラッグの赤裸々な描写に衝撃を受けたようだ。一方、「ハリー・ポッター」シリーズで高く評価された若者たちの生き生きした描写が新作でも生かされているとも指摘している。 

■賛否両論、でも「子どもには読ませないで」

 デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)紙の書評家アリソン・ピアソン(Allison Pearson)氏によると、ローリング氏の新作には次のようなシーンがある。「10代の少女が、母親にヘロインを売っている男からレイプされる。その男は少女の3歳になる弟の父親の可能性が高い。しかし読者には、少女の母親が売春婦であることはなかなか知らされない」

 イギリスの田舎町の貧困と政治を描いたこの小説について、ピアソン氏は「笑わせる部分もあり、驚くほど鋭い観察眼によって描かれている。残忍性や絶望も満載」と論評した。

 だが大衆紙ミラー(Mirror)は、新作を人気シリーズになぞらえて「ハリー・ポッターと不潔なゴブレット(Harry Potter and the Goblet of Filth)」と酷評。「不快なののしり用語が何百回と登場しており、厳しい批判にさらされるのは確実」と切り捨てた。

 これに対しインディペンデント(Independent)紙は、新作を「自由の歌」と評価。「『ハリー・ポッター』シリーズ後期の作品では、ファンタジー世界の中で婉曲に表現せざるを得なかった社会問題や成長する若者の葛藤といったテーマが、この小説でははっきりと描写されている。子どもたちを軸として物語は鮮やかにメロドラマ的なクライマックスへと突き進む」と高く評している。

 ところで、ローリング氏の新作に一定の評価を与えたデーリー・テレグラフのピアソン氏だが、「ハリー・ポッター」シリーズの作者だからだといって間違って子どもたちが手に取ってしまうことが最大の懸念だとも指摘。「私の子どもたちには絶対に読ませないようにする」と述べ、世界中の親たちに忠告している。(c)AFP/Judith Evans