【4月21日 AFP】米映画監督ウディ・アレン(Woody Allen)氏が米カジュアル服メーカー、アメリカンアパレル(American Apparel)を相手取り起こした損害賠償訴訟の審理が5月に開始されるが、裁判前から両者は汚いののしりあいを展開している。

 アレン氏は1977年の代表作『アニー・ホール(Annie Hall)』の映像をアメリカンアパレルが無断で広告に使用したとして同社を訴え、1000万ドル(約9億8000万円)の損害賠償を請求している。審理は5月18日から始まる。

 体にぴったりの下着やカジュアル服でカルト的な人気を誇るカリフォルニア(California)のメーカー、アメリカンアパレルは、アレン氏の過去の私生活やスキャンダルをあげつらい、いまさら同氏にイメージを守る必要などないと強く反発している。

 同社の弁護団は、裁判で「セックス・スキャンダルや親権争いで、すでにアレン氏のキャリアやイメージには傷が付いている点を強調する」としている。アレン氏は、長年のパートナーだった米女優ミア・ファロー(Mia Farrow)と別れた後にファローの養女と結婚し、物議を醸した。

 同社が『アニー・ホール』の映像を使用したのは2年前。ユダヤ教超正統派の伝統的なひげをアレン氏が生やした写真を使った広告が、ニューヨークとロサンゼルス(Los Angeles)に登場した。アレン氏は若い頃はCMに出演したこともあるが、以降一切のCM出演を拒否している。

 08年12月の宣誓供述書でアレン氏は、アメリカンアパレルにも、露骨に性的な表現で悪名高い同社の広告にも一切関与する意志がない旨を明言した。

■アレン氏の戦いの相手は奇行癖の最高経営責任者

 アレン氏と一戦を交えるのは、アメリカンアパレルの創立者でもあるカナダ人のドブ・チャーニ(Dov Charney)最高経営責任者だが、セクハラをめぐる訴訟や、仕事関連の場で恥部を露出するなどといった奇行で、チャーニ氏自身のイメージも傷だらけだ。

 2006年には「わたしは自分の新製品を披露するのに、よくパンツを脱ぐんだ」と発言し、チャーニ氏の悪評はさらに増した。米女性誌ジェーン(Jane)の女性記者が、経歴取材のために2004年、チャーニ氏に同行していた際、同氏が自分の目の前でマスターベーションをしたと明かしたこともある。

 チャーニ氏に対しセクハラ訴訟を起こしている女性の1人は、同氏が自宅で開いたビジネス会議に、おそらく新製品になっていたかもしれない靴下ならぬ「ぺニス下」をつけて登場したと訴えた。

 しかし、アメリカンアパレルの弁護人スチュアート・スロットニック(Stuart Slotnick)氏は米紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)に4月上旬、アレン氏こそ法廷で「自分の価値」を証明しなければならないほうだと語った。

 同弁護士は「アレン氏の人気は、特に自分が絡んだスキャンダルの数々によって、すでに著しく落ちているとわれわれは思う。彼は自分がCMに出演した場合の価値を大きく見積もりすぎだ」と述べた後に「まあ、彼に出演依頼があればの話だが」と付け加えた。(c)AFP/Sebastian Smith