【9月17日 AFP】 急成長を遂げる自動車生産拠点のハイテク工場で、産業ロボットや作業員が組立ラインから出てくる何百台もの車に仕上げの作業を施す。豊田市(Toyota City)や米デトロイト(Detroit)の光景にもみえるが、ここはビーチや水田風景で知られるタイだ。世界的な景気後退で打撃を受ける世界の主要自動車メーカーをよそに、タイの自動車産業はここ数年で急発展している。

 日本の自動車各社や米フォード・モーター(Ford Motor)による大規模投資により、タイはライバルのインドネシアを抑え、東南アジア最大の自動車生産国となった。世界自動車工業会(International Organization of Motor Vehicle Manufacturers)によると、2012年のタイの自動車生産は前年比70%増の248万台。一方、中国やインドの12年の生産の伸びは1桁台にとどまった。12年のタイの自動車輸出は約100万台だった。

 市場シェア争いが激化するなか、日本を中心とした自動車大手はタイで急成長する消費者階級向けの販売拡大を狙うほか、地の利を生かしてタイを東南アジアの輸出拠点として活用しようと新工場に次々と投資している。

 バンコク(Bangkok)郊外にあるホンダ(Honda Motor)の工場では、新車1台を3日で完成させる。1日の生産台数は1100台超。15年には建設費6億4400万ドル(約640億円)の工場がバンコク郊外で稼働開始する予定で、タイでの年間生産を42万台に引き上げたいとしている。

 ライバルのトヨタ自動車(Toyota Motor)は12年に同社としては5つ目となる組立工場で生産を開始。12年のタイでの販売台数は50万台超で、年77万台を目標としている。ニッサン(Nissan)は14年に新工場を稼働させる予定で年15万台の生産を目指す。

 優遇税制のおかげで、タイの国内自動車販売は12年に続き、今年上半期も好調だったが、下半期に入ってからは家計債務に関する懸念のほか、銀行による貸付限度額の引き下げを背景に失速している。だがアナリストらは、タイの今後数年の自動車市場について年10%の成長を見込んでいる。(c)AFP/William DAVIES