【6月18日 AFP】緑豊かな島々が点在する紺ぺきのアドリア海沿岸などが人気観光地として注目されるクロアチア。7月の欧州連合(EU)加盟で観光業が活発化し、不況に苦しむクロアチア経済にとってカンフル剤になるとの期待が高まっている。

 欧州旅行大手TUIトラベル(TUI Travel)傘下の現地旅行代理店、ガリバーズ・トラベル(Gulliver Travel)のGoran Hrnic社長は「EU加盟により、観光地としてのクロアチアのイメージは確実に向上するだろうし、大幅な投資増加も期待できる」と話した。

 2012年にクロアチアを訪れた観光客は、同国人口420万の約3倍に当たる過去最高の1180万人を記録。ドイツ人、スロベニア人、イタリア人、オーストリア人が大半だった。09年以来ほぼずっと不況に陥っているクロアチアにとって観光業は大きな支えだ。12年の観光収入は約68億ユーロ(約8600億円)で、国内総生産(GDP)の約15%を占めた。

 クロアチアの観光業は1980年代に最盛期を迎えたが、旧ユーゴスラビアからの分離独立に発した1991~95年のクロアチア紛争によって大打撃を受けた。アドリア海の真珠と呼ばれるドゥブロブニク(Dubrovnik)の旧市街もセルビア人勢力に包囲され、砲撃によって多くの死傷者が出るとともに街も甚大な損害を受けた。しかし紛争終結後、観光業は徐々に回復し、紛争以前の水準を上回るようになった。

 クロアチア観光の目玉は、約1100の島々が入り組む全長1777キロの海岸線だ。魅力的な地中海の気候に手頃な物価、格安航空によるアクセスの充実も観光客を惹きつける勝利の方程式だ。

 ドゥブロブニクには飛行機を利用して5日間程度滞在する人の他、クルーズ船による旅の途上で立ち寄る人々も年間約100万人いる。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産に登録されているドゥブロブニク旧市街では、観光客の数が市民を上回ることさえ多い。12年の観光客数は約80万人だった。

 同市ホテル協会のジェリコ・ミレティチ(Zeljko Miletic)会長はAFPのインタビューに対し、EU加盟について「10年にわたるプロセスを経て、この7月1日に加盟を果たせば、より力強い需要が大いに期待できる」と述べた。

 一方、EU加盟によってマイナスの影響を被る可能性もある。加盟後は、EU域内の規則に従い、ロシアやウクライナ、トルコからの観光客に対し、ビザ(査証)取得を要請しなければならない。ガリバーズ・トラベルのHrnic社長によると「ロシアとウクライナからの予約は、当初の見込みを15%ほど下回っている」という。(c)AFP/Lajla VESELICA