【5月24日 AFP】悪夢のような新規株式公開(IPO)から1年が経ち、交流サイト(SNS)最大手、米フェイスブック(Facebook)には依然として、熱心な支持者と批判者の両方がいる。

 フェイスブックは11億人超のユーザーを持つ世界最大のソーシャル・ネットワーク。IPO以来、モバイルプラットフォームを含む事業でどうにか業績を伸ばし、批判的意見への反論材料を積み上げてきた。

 2012年5月18日のIPOでフェイスブックはさまざまな危機に直面した。当初38ドルだった株価は9月に17.73ドルまで下落した。

 IPO当初は、収入を伸ばし、多機能携帯などのモバイルコンピューティングへのシフトに対応できるかについて、疑問を持たれていたが、ここ最近のほとんどの決算で利益を増やし、広告収入のうちモバイル事業が30%を占めるようになった。業績はおおむね市場予想を上回っている。現在、株価は25~28ドルで安定しており、当初、批判的だった投資家も一部は渋々ながら、称賛を始めている。

■分かれる評価

 調査機関グローバル・エクイティーズ・リサーチ(Global Equities Research)のアナリスト、Trip Chowdhry氏はAFPに「フェイスブックの戦略は改善している。若干、成熟が進んだようだ」と話す。同氏はフェイスブック株の目標価格を28ドルに設定し、業績が良好であれば、一段と上昇する可能性を示唆した。

 さらに同氏は、「フェイスブックは業界の中で議論の余地のないリーダー。誰も肩を並べることさえできない」とし、ライバルである米インターネット大手グーグル(Google)のSNSグーグルプラス(Google+)は「フェイスブックに少しの傷も付けていない」と語った。ただ、同氏はフェイスブックについてまだ慎重な見方をしているとした上で、同社はユーザーを引き続き引きつけるため、常に革新的であることが必要と指摘。また、広告に重点を置き過ぎると、ユーザーは離れ、「第2のマイスペースになってしまうだろう」と述べた。マイスペース(MySpace)はフェイスブックが台頭する前に業界をリードしていたが、経営危機に陥った。

 一部の投資家は、PER(株価収益率)が高いことを理由にフェイスブック株を評価していない。楽観的な収益予想に基づいても、同社のPERは70前後で、グーグルの27や米アップル(Apple)の10と比べはるかに高い。

 スイス金融大手クレディ・スイス(Credit Suisse)のアナリスト、ステファン・ジュ(Stephen Ju)氏はフェイスブックは「堅調な」業績を上げており、「われわれは依然、楽観的に評価している」としながらも、同社株は「既に中期的な利益を織り込んでいる」と話した。

 一方、インディゴ・エクイティ・リサーチ(Indigo Equity Research)のニコラス・ランデルミルス(Nicholas Landell-Mills)氏は、フェイスブックの株価が正当化できるものかを判断するのは難しいと話す。さらに、「フェイスブックは今も変化しており、多くの商品はまだ初期段階にある」と述べ、「フェイスブックは広告収入と広告の単価を上げるために、オンライン広告を改革する必要がある」と指摘した。

 また、長期間にわたりフェイスブックを高く評価しているソーシャル・インターネット・ファンド(Social Internet Fund)のルー・カーナー(Lou Kerner)氏は、「非常に良く事業を運営している。より良いモバイルアプリを開発し、それらから利益を得る能力を示してきた」と語った。

 この1年間、フェイスブックは特にモバイル分野での広告を強化した。また、「ニュースフィード」を改良し、検索機能「グラフ検索」をスタートさせた。さらに、アンドロイド・スマートフォンのホーム画面にフェイスブックを表示させるアプリ「Home」を開発した。

 カーナー氏は、フェイスブックは既に成熟しており、「もうクールではない」としたものの、多くの人は友人やセレブなどとつながるためにフェイスブックを使う必要があると指摘。「他ではできないような方法で人々とつながることができる」と話し、投資家がフェイスブック株について冷静であっても、自分は「とても強気だ」と話した。

 一方、テクノロジーアナリストのジェフ・ケーガン(Jeff Kagan)氏はフェイスブックは新たな携帯電話向けプラットフォームで大失敗しており、株価の正当化に十分な利益を出せることをまだ証明していないと述べた。(c)AFP/Rob Lever