【5月21日 AFP】世界銀行(World Bank)前総裁のロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)氏は20日、米国とニュージーランドの関係について話し合う会議の中で日本について言及し、日本経済には構造改革が必要であり、最近の好調ぶりはただの「シュガーハイ」に過ぎない危険性があるとの懸念を示した。

 安倍晋三(Shinzo Abe)政権がマネーサプライ(通貨供給量)を増やし財政刺激策を増強する「アベノミクス(Abenomics)」に着手した日本の2013年1~3月期のGDP(国内総生産)は、前年同期比で0.9%増、年率で3.5%増となった。

 これについてゼーリック氏は、「安倍首相が就任し、なんらかのショック効果を及ぼそうとする意図は理解できる。だが、これが大きな賭けではない、という幻想にはとらわれるべきではない」と述べ、「私が注目するのは次のことだ。これがただのシュガーハイではないといかにして確信できるか。継続性があるといかにして確認するかだ」と語った。

 ゼーリック氏はまた、日本の財政赤字を指摘しつつ、経済の自由化に向けた構造改革が必要だと主張した。安倍首相が環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)の交渉参加に踏み切ったことにより、日本は、政治的にリスクがともなう一連の改革についての議論が強いられることになるだろうとして期待を寄せた。

「自らの政策としてであれ、TPPを通じてであれ、あるいはその両方であれ、日本が構造改革に着手しなければ、この(安倍政権の)政策は単なる通貨切り下げ戦略になるだろうと私は懸念している。そしてこの政策は他国にも悪影響を及ぼしかねない」

 円相場は、続落し4年ぶりに1ドル100円台に乗せた。円安は日本製品の国外での価格を引き下げるため、日本の輸出業に有利に働くが、輸出競争国からは批判の声が上がっている。

 アベノミクスは欧州でも注目を集めている。緊縮財政政策を批判する人々は、日本が、経済的苦境に立たされている欧州に活気を取り戻すモデルになるかもしれないとしてその動向を注視している。(c)AFP