【4月2日 AFP】シリアの主要商業都市アレッポ(Aleppo)に住むアブ・サレム(Abu Salem)さん(40)はかつて、昼休みの会社員を相手にサンドイッチを売っていた。しかし、反体制派の攻勢により同市も戦場と化した2012年7月から、サレムさんは各家庭が蓄えてきた金を売買して生計を立てている。

 シリア北部のこの大都市では昔から、中東各地で見られるのと同じように、経済的に余裕のある世帯は万一に備えて女性用のアクセサリー、特に金に投資してきた。

 バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の打倒を目指す反体制派が、政府軍と日常的に戦闘を繰り広げているため、通常の経済活動は全て中断を余儀なくされた。人々が生活のやりくりに苦労する中、貴金属の取引が盛んになっている。

 サレムさんがサンドイッチの売店を諦めたのは、停電で冷蔵庫が使えなくなったから。その代わりに最も収入につながりやすい商売として金売買を始めたが、アレッポに展開する政府軍の勢力が及ばない地域で活動する多数の武装グループから強盗に遭う危険に日々さらされている。

「多くの貴金属商が戦闘から逃れて出て行った。そういう人たちは国を離れられるだけの資金を持っていたんだ。私が金の売り買いをするのは、5人の子どもを養うためさ」と、サレムさんはAFPに語った。

 買い手も少なくない。2年に及ぶ壊滅的な内戦でシリア・ポンドは急落。少しでもお金を持っていれば、その価値を維持する術として金に目を付ける人が多い。

 シリアで反体制蜂起が始まった2011年3月の前と現在を比べると、金の価格は1グラム当たり3200シリア・ポンドから同4900シリア・ポンドに上がり、為替相場は1ドル=65シリア・ポンドから1ドル=113シリア・ポンドにまでシリア・ポンド安が進んだ。

 しかしリスクも大きい。もう1人の金取引商、アブ・ハルドゥーン(Abu Khaldoun)さん(49)は、「武装集団が盗みに来る。中には、(反体制派の主要な武装勢力である)自由シリア軍(Free Syrian Army)に属する者もいる。安全な場所などなく、私たちは強盗の格好の標的だ。金や現金を地面に穴を掘って隠している人もいる」と話した。(c)AFP/Marie Roudani