【12月14日 AFP】いまだかつて「勝利」がこれほど甘い香りを放ったことがあっただろうか。パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza)でこのほど新発売された香水「M75」は、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)の武装勢力がイスラエル攻撃に用いた長距離ロケット弾の名だ。

 ガザ市(Gaza City)近郊の高所得者層が住むリマル(Rimal)で商店「ステイ・スタイリッシュ(Stay Stylish)」を営むアブ・アハメド(Abu Ahmed)さんは、新たに売り出す香水に大胆な商品名を付けた。「抵抗のロケット弾、ガザの勝利の象徴として、M75という名前を思い付いたんだ」

 11月に8日間続いたハマスとイスラエルとの戦闘では、M75を含め数種類の長距離ロケット弾がイスラエルに撃ち込まれた。一連の衝突で、パレスチナでは市民100人以上を含む174人が死亡。イスラエルでも民間人4人、兵士2人の計6人が死亡した。

 衝突は両者の停戦によって収束したが、ガザの人々の多くはハマスが勝利を収めたと感じている。特にM75には多くのガザ市民が感銘を受けたとみえ、7日に初めてガザ入りした現ハマス指導者のハレド・メシャール(Khaled Meshaal)氏はハマス創設25周年記念式典で、M75の巨大模型の中から登場し演説を行うパフォーマンスを見せた。

 新発売の香水の販売促進を考えたとき、ガザ勝利のイメージを用いるのは「ごく自然な選択だった」とアハメドさんは話す。「M75が(イスラエルの)テルアビブ(Tel Aviv)やエルサレム(Jerusalem)にまで到達したことを、ガザの人々は誇りに思っているんだ。だからM75は大きな話題になっているし、ガザの人たちに好かれている」

 香水には男性用と女性用があり、価格は1瓶50シュケル(約1100円)。「豪華」な原料を用いているため決して安くはないにもかかわらず、売れ行きは好調だ。アハメドさんによれば「M75」の成功に他のガザの起業家たちも関心を示しており、「M75」ブランドの新製品が続々と誕生することになるだろうという。(c)AFP