日本経済再生の「秘密兵器」、女性の就労が日本を救う
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【11月26日 AFP】来月16日に投開票が行われる総選挙に向け、各政党の候補者たちは低迷する日本経済の立て直しを公約として掲げるだろう。だが、女性の問題に言及する政治家はごく少数と予想される。そもそも、候補者のほとんどが男性なのだ。
日本が抱える問題は周知のように、寿命が延びて高齢者が増加する一方で、彼らを支える労働人口は減少の一途をたどっていることだ。この結果として福祉コストは上昇し、税収基盤は縮小している。移民が流入すれば労働人口は増えるものの、欧州並みの規模で移民を受け入れる意欲は日本にはほとんどない。
その解決策は日本の国内にあると識者らは指摘する。それは女性の就労を促進することだ。
■日本の男女間格差、世界101位
国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)専務理事は先月、慢性的な不振に陥った日本経済を、より多くの日本女性が職に就くことで救える可能性があると発言している。
米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)も2010年のリポートで、日本で現在は60%の女性の就業率が男性並みの80%に上昇した場合、国内総生産(GDP)の伸び率は15%に拡大すると推計している。その一方でリポートは、第1子出産後に仕事を辞める女性が10人中7人に上り、大学レベルの教育を受けた女性の65%しか就業していないとも指摘している。
厚生労働省のデータによると、全般的に見て女性の賃金は男性の60%にとどまっている。女性の場合、パートタイム就業が多いことも低収入の一因だ。
積極的な選択として専業主婦を選ぶ女性もいるが、そうでない女性は就業機会がないために主婦にとどまっているにすぎないと識者らは指摘する。
世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)が今年発表した「世界男女格差年次報告書(Global Gender Gap Report)」によれば、日本の男女間格差は昨年から3位後退し135か国中、実に101位とほとんど最下位レベルだ。ちなみに隣国の中国は69位となっている。
また、政府データによると、日本の上場企業3600社における女性役員の割合はわずか1.2%だ。
■男性の同一集団、多様性阻む
コンサルティング会社イー・ウーマン(ewoman)の佐々木かをり(Kaori Sasaki)代表取締役社長は、日本では男女格差の問題が無視されていると話す。日本では戦後の50~60年間、男性の特定集団が経済やメディア、政治の分野でトップの地位を占めてきた。その結果、こうした男性同士のネットワークが同じ価値観を共有し反対されることなく意思決定を行ってきたと、佐々木氏は指摘する。
だが、この20年間、そうした男性社会システムは日本が直面してきた難題への適応に失敗し、現在の日本の停滞を招いた。
佐々木氏は、日本の男性たちは、男女格差の是正が、もはや男女平等権だけの問題ではないと認識するべきだと訴え、17億ドルの損失を隠ぺいしていたオリンパス(Olympus)、東日本大震災により事故が発生した福島第1原発を抱える東京電力(Tokyo Electric Power Co、TEPCO)など問題が明るみになった企業も、多様な人材を幹部に起用していたならば、もっと適切な危機対応を取っていただろうとの見解を示した。佐々木氏によれば、危機管理だけでなく商品製造やサービス企画の発案などにおいても、多様性は非常に重要になってくるという。
WEFで男女性差や人的資本問題を担当するサーディア・ザヒディ(Saadia Zahidi)氏も、こうした意見に同意する。都内で22日、特別作業部会の発足に際してザヒディ氏は「過去と状況が全く同じで、顔ぶれもこれまでと同じなら、どうして変革が起こるだろうか。一体、どこから新しいアイディアが湧くというのか」と疑問を投げ掛けた。
■働く女性支える仕組みが必要
中央大学(Chuo University)文学部の山田昌弘(Masahiro Yamada)教授(家族社会学)は、日本で働く女性に求められているのは、状況を改善することよりも生活のための収入を得ることだとコメント。働いて収入を得る女性が増えなければ、若者たちは家庭を築くことができず今後も人口減少が続き、女性が労働力に加わらなければ政府の税収も増えないと指摘した。
一方、出産後の女性が仕事に復帰する上で足かせになっているのが、託児施設や保育所不足の問題だ。こうした施設は利用料金が高額なうえ、一般的に昼間しか子どもを預けられない。また、家庭生活と仕事の両立の難しさや長時間の残業、ほぼ義務的な勤務時間後のつきあいなどが仕事復帰の妨げとなっている女性もいる。
それでも状況は徐々に変化はしていると、都内のIT企業に勤める38歳の女性は言う。働く女性のニーズに深い共感を示すこの女性は、2009年に女児を出産。15か月の産休後に職場に復帰し昇進した。現在の勤務時間は1日6時間だが、生産性は以前と変わらないという。
この会社は性別を問わず、法律規定の18か月を大幅に上回る最大6年間の育児休暇を社員に認めている。休暇期間は無給となるが、雇用は保証されている。
イー・ウーマンの佐々木氏は、状況が以前から改善しつつあることは認めつつも、それでも問題はまだ残っていると話す。佐々木氏によれば、若い女性の多くが女性であることで昇進が制限される「ガラスの天井」は、もう感じないと語っている。そうした女性たちに佐々木氏は、ガラスの天井はより高くなっただけで、まだ存在していると諭しているという。(c)AFP/Harumi Ozawa
日本が抱える問題は周知のように、寿命が延びて高齢者が増加する一方で、彼らを支える労働人口は減少の一途をたどっていることだ。この結果として福祉コストは上昇し、税収基盤は縮小している。移民が流入すれば労働人口は増えるものの、欧州並みの規模で移民を受け入れる意欲は日本にはほとんどない。
その解決策は日本の国内にあると識者らは指摘する。それは女性の就労を促進することだ。
■日本の男女間格差、世界101位
国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)専務理事は先月、慢性的な不振に陥った日本経済を、より多くの日本女性が職に就くことで救える可能性があると発言している。
米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)も2010年のリポートで、日本で現在は60%の女性の就業率が男性並みの80%に上昇した場合、国内総生産(GDP)の伸び率は15%に拡大すると推計している。その一方でリポートは、第1子出産後に仕事を辞める女性が10人中7人に上り、大学レベルの教育を受けた女性の65%しか就業していないとも指摘している。
厚生労働省のデータによると、全般的に見て女性の賃金は男性の60%にとどまっている。女性の場合、パートタイム就業が多いことも低収入の一因だ。
積極的な選択として専業主婦を選ぶ女性もいるが、そうでない女性は就業機会がないために主婦にとどまっているにすぎないと識者らは指摘する。
世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)が今年発表した「世界男女格差年次報告書(Global Gender Gap Report)」によれば、日本の男女間格差は昨年から3位後退し135か国中、実に101位とほとんど最下位レベルだ。ちなみに隣国の中国は69位となっている。
また、政府データによると、日本の上場企業3600社における女性役員の割合はわずか1.2%だ。
■男性の同一集団、多様性阻む
コンサルティング会社イー・ウーマン(ewoman)の佐々木かをり(Kaori Sasaki)代表取締役社長は、日本では男女格差の問題が無視されていると話す。日本では戦後の50~60年間、男性の特定集団が経済やメディア、政治の分野でトップの地位を占めてきた。その結果、こうした男性同士のネットワークが同じ価値観を共有し反対されることなく意思決定を行ってきたと、佐々木氏は指摘する。
だが、この20年間、そうした男性社会システムは日本が直面してきた難題への適応に失敗し、現在の日本の停滞を招いた。
佐々木氏は、日本の男性たちは、男女格差の是正が、もはや男女平等権だけの問題ではないと認識するべきだと訴え、17億ドルの損失を隠ぺいしていたオリンパス(Olympus)、東日本大震災により事故が発生した福島第1原発を抱える東京電力(Tokyo Electric Power Co、TEPCO)など問題が明るみになった企業も、多様な人材を幹部に起用していたならば、もっと適切な危機対応を取っていただろうとの見解を示した。佐々木氏によれば、危機管理だけでなく商品製造やサービス企画の発案などにおいても、多様性は非常に重要になってくるという。
WEFで男女性差や人的資本問題を担当するサーディア・ザヒディ(Saadia Zahidi)氏も、こうした意見に同意する。都内で22日、特別作業部会の発足に際してザヒディ氏は「過去と状況が全く同じで、顔ぶれもこれまでと同じなら、どうして変革が起こるだろうか。一体、どこから新しいアイディアが湧くというのか」と疑問を投げ掛けた。
■働く女性支える仕組みが必要
中央大学(Chuo University)文学部の山田昌弘(Masahiro Yamada)教授(家族社会学)は、日本で働く女性に求められているのは、状況を改善することよりも生活のための収入を得ることだとコメント。働いて収入を得る女性が増えなければ、若者たちは家庭を築くことができず今後も人口減少が続き、女性が労働力に加わらなければ政府の税収も増えないと指摘した。
一方、出産後の女性が仕事に復帰する上で足かせになっているのが、託児施設や保育所不足の問題だ。こうした施設は利用料金が高額なうえ、一般的に昼間しか子どもを預けられない。また、家庭生活と仕事の両立の難しさや長時間の残業、ほぼ義務的な勤務時間後のつきあいなどが仕事復帰の妨げとなっている女性もいる。
それでも状況は徐々に変化はしていると、都内のIT企業に勤める38歳の女性は言う。働く女性のニーズに深い共感を示すこの女性は、2009年に女児を出産。15か月の産休後に職場に復帰し昇進した。現在の勤務時間は1日6時間だが、生産性は以前と変わらないという。
この会社は性別を問わず、法律規定の18か月を大幅に上回る最大6年間の育児休暇を社員に認めている。休暇期間は無給となるが、雇用は保証されている。
イー・ウーマンの佐々木氏は、状況が以前から改善しつつあることは認めつつも、それでも問題はまだ残っていると話す。佐々木氏によれば、若い女性の多くが女性であることで昇進が制限される「ガラスの天井」は、もう感じないと語っている。そうした女性たちに佐々木氏は、ガラスの天井はより高くなっただけで、まだ存在していると諭しているという。(c)AFP/Harumi Ozawa