【11月2日 AFP】皇帝ナポレオン・ボナパルト(Napoleon Bonaparte)率いるロシア遠征から今年で200年を迎え、ナポレオンが「クレムリン(Kremlin)宮殿を吹き飛ばす」と誓った手紙が12月にパリ(Paris)郊外フォンテーヌブロー(Fontainebleau)でオークションに掛けられる。

 手紙は個人が所有しているもので、予想落札価格は1万~1万5000ユーロ(約100万~155万円)。ナポレオン軍がモスクワ(Moscow)中心部から撤退した翌日の1812年10月20日付けで、当時のユーグベルナール・マレ(Hugues-Bernard Maret)外相に宛て「22日午前3時にクレムリンを吹き飛ばす」との暗号化された文面に加え、「Nap」という署名が記されている。

 ナポレオンの命を受けたモルティエ元帥(Marshal Mortier)は、当時ロシア皇帝の宮殿かつ軍事要塞として使われていたクレムリン宮殿の城壁や塔の一部を破壊した。この時の塔は後に元通りの姿に再建されている。

 競売会社「Ocenat」のアラン・ニコラ(Alain Nicolas)氏は、「ナポレオンのロシアからの手紙は貴重。その多くは恐らくロシア人に奪われたため、現存していない」と話す。

 手紙の中でナポレオンはマレ外相に対し、物資を集めて兵士が乗る馬をもっと探すよう要請している。しかし、モスクワ遠征では凍てつくような寒さにより多くの兵士が命を落とした。

 ナポレオン軍は1812年9月14日にモスクワに進軍したが、既に多くの住民が市外へと逃れており、ロシアのアレクサンドル1世(Alexander I)に対する正式な勝利を得られないまま、西方への無残な撤退を余儀なくされた。

 今回のオークションの目玉としてはこの他、ナポレオンが流刑地の英領セントヘレナ(Saint Helena)島で口述し、注釈も加えたロシア遠征に関する随想録も出品される。この中でナポレオンは、現在では欧州におけるフランスの影響力衰退のきっかけと考えられているこの遠征について、「同盟軍は勝利したのだから撤退と呼ばれるべきではない」とつづっている。

 随想録はベルトラン将軍(General Bertrand)の家族が所有していたもので、1818年7月~19年8月までに書かれた両面180ページの手書き文書とスケッチ44点の一部。6万~8万ユーロ(約620万~830万円)で落札されると予想されている。(c)AFP