【8月16日 AFP】アジア開発銀行(Asian Development BankADB)は15日、アジア諸国は急速な都市化によって環境リスクが増大しており、洪水などの自然災害から都市を守る措置を早急に講じる必要があるとした報告書を発表した。

 報告書は、大都市圏の拡大が進むアジアで災害被害を軽減するには、環境に配慮したよりスマートな都市計画とインフラ投資を進める以外に方法はないとしている。

 ADBの本部があるフィリピン・マニラ(Manila)で市内の8割が冠水した前週の洪水、中国・北京(Beijing)で数十人が命を落とした7月の豪雨、そしてタイ・バンコク(Bangkok)で発生した前年の水害は全て、アジアの各都市が市民を気候変動の影響から守ることができないことを示しているとADBは警告している。

■インフラ整備、「量」から「質」へ

 この状況は、アジア経済が成長を続け、数千万人もの人々が人口1000万人以上の「メガシティ(巨大都市)」に集中するにつれてさらに悪化するだろう。

 ADBの調査によれば、世界のメガシティの半数が存在するアジアでは、都市部の人口が1980~2010年の間に10億人以上増加し、2040年までにはさらに10億人増えると予測されている。その結果、環境汚染、犯罪、社会格差やスラム街が急増して既存のインフラを圧迫し、市当局は大胆な対応策を迫られることになるという。

 ADBの主任エコノミスト、李昌鏞(Changyong Rhee)氏は、アジア諸国はインフラ整備に巨額の資金を投入してきたが、「質」ではなく「量」に重点が置かれてきたために、市民の安全を十分に確保できていないと指摘する。排水システムが不完全な道路の建設はその1例だ。

 報告書はインフラ整備の「質」を上げるため、渋滞税や炭素税導入で歳入を増やし、環境に配慮した公共交通機関などのグリーンなインフラ整備の資金に充てることを提案した。また新技術を活用して、気候変動の影響を受けにくく環境にも優しい都市にしていくことへの期待を示した。(c)AFP