【6月29日 AFP】フランスで一時は900万世帯が使っていた情報通信サービス「ミニテル(Minitel)」が30日にサービスを終了し、約30年の歴史に幕を閉じる。運営会社のフランステレコム・オレンジ(France Telecom-Orange)が発表した。

 最先端の技術として登場したミニテルは、ニュースの閲覧、電話帳の検索、列車や飛行機のチケット購入、レストランの予約から成人向けのチャットサービスまで、さまざまなサービスを世界に先駆けて提供していた。

 だがインターネットの台頭によってモノクロ画面のダイヤルアップ接続端末は時代遅れになり、一部のユーザーから抗議があったもののサービス終了が決定した。

■愛されたハイテクネットワーク

 1970年代にフランステレコム(France Telecom)が開発したミニテルは端末が無料で配布され、最盛期の1990年代初頭には2万6000種のサービスが利用可能で、年間の売り上げは約10億ユーロ(約1000億円)に上った。

 だが現在も使用されている端末は40万台ほど。エールフランス(Air France)の航空券や鉄道チケットの予約など多くのサービスが既に終了しており、2010年の売上高はわずか3000万ユーロ(約30億円)だった。

 売上高の85%はサービス提供会社が受け取ることから、フランステレコムはネットワーク維持費を負担し続ける価値がないと判断した。

■農業でも大活躍

 フランスの農業では、高速のインターネット回線が利用できない遠隔地などで現在もミニテルが広く活用されている。

 ブルターニュ(Brittany)地方のイルエビレーヌ(Ille-et-Vilaine)農業会議所のアラン・バジール(Alain Bazire)さんは、「農家は急ぐときに(ミニテルを)よく使ったものだよ」と語る。「人工授精師や廃馬解体業者を呼ぶときや、家畜が子を産んだことを知らせるときにね。番号を打つだけですぐにアクセスできるんだ」

 ブルターニュ地方のビトレ(Vitre)で農場を経営する女性(52)はミニテルがなくなってもパソコンを買うつもりはないと言う。「パソコンは複雑すぎるわ。ミニテルは最高だったのよ」

(c)AFP/Emmanuelle Trecolle and Boniface Murutampunzi