【6月11日 AFP】暗い見出しばかりがこれでもかと並ぶユーロ圏の経済ニュースに嫌気が差した欧州の金融アナリストらが、自慢の分析技術をもっと楽しいことに活用しようと、前週末開幕したサッカー欧州選手権2012(UEFA Euro 2012)の優勝国を経済学的に予測分析した。

 公社債市場やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)取引といった複雑な市場予想に用いるさまざまなモデルを駆使した本格的な分析の結果、大方はスペインかドイツが優勝するという意外性からは程遠い結論にたどり着いたようだ。

■「ユーロ圏が優勝」8割、経済的にはフランスが最良?

 ドイツ自治体銀行(DekaBank、デカバンク)の予想によれば、ユーロ圏17か国中から優勝国が出る確率は86%。欧州通貨ユーロの将来に頭を悩ませる加盟国の人々にとっては喜ばしいニュースだろう。過去4大会の結果を分析して数学モデルに当てはめたところ「スペイン、オランダ、ドイツのいずれかが優勝」との結果が出たという。

 一方、「サッカーは重要でない物事の中で何より重要なもの」とうたうオランダ銀行大手ABNアムロ(ABN Amro)は、「半ば大真面目に取り組んだ」と自負する欧州選手権の分析報告「サッカーノミクス(Soccernomics)」を発表。参加国のサッカー成績をその国の信用格付けと照合した末、7月1日の決勝で優勝するのはドイツだと結論付けた。

 ただ、ユーロ圏経済の将来という観点から見た場合に一番望ましい優勝国は、フランスだという。ユーロ圏の核となる大国ながら不安定な経済状況にある同国が、自信を取り戻せるからだ。

 同行は「サッカーノミクス」を発表した理由を、ユーロ危機が2年も続く中で欧州にも何か明るい話題が必要だと説明している。 

■選手の市場価値から算出するとスペイン優勢

 イタリア銀行大手ウニクレディト(UniCredit)のアナリストたちは、数学モデルに当てはめるマクロ経済データを集めるため、自ら街に繰り出した。

 所属選手の移籍市場における価値から参加国の勝率を分析。「選手価値」の合計が最も高い4か国が準決勝に進むと予測した結果、準決勝の組み合わせはポルトガル対スペイン、ドイツ対イングランドとなった。

 4か国の選手価値はポルトガルが3億3800万ユーロ(約340億円)、スペインが6億5800万ユーロ(約660億円)、ドイツが4億5900万ユーロ(約460億円)、イングランドが3億9200万ユーロ(約390億円)だった。

 ドイツ経済研究所(DIW)では、欧州25サッカーリーグに所属する382クラブチームの市場価値と、各選手のシーズン終了時点での市場価値とを相互参照。優勝国はスペインまたはドイツと導き出した。
 
 だが、4か国が2枠を争うグループリーグとノックアウト方式の決勝トーナメントでは「運」も大きな要素となることから、グループステージで強豪のポルトガルやオランダと同じ「死の組」に入ったドイツに関しては「準々決勝に駒を進めることができるかどうか、大きなリスクがある」と指摘している。

■経済的に困窮する国こそ最後に笑う?

 ちなみにABNアムロは、直近の4つの主要サッカー大会ではいずれも現在、経済危機真っ只中にある国が優勝を果たしている点にも注目している。2004年の欧州選手権ではギリシャ、06年W杯ドイツ大会ではイタリア、08年欧州選手権と10年W杯南アフリカ大会ではいずれもスペインが優勝した。

 これについてABNアムロのアナリストは、「経済的に苦しんでいる国の選手が何が何でも勝ってやろうと奮発するのに対して、裕福な国の選手は怠惰になりがちで、モチベーションの点で負けるためではないか」と分析している。(c)AFP/Mathilde Richter