ギリシャのユーロ離脱はハルマゲドンか、損失額80兆円の試算も
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【5月21日 AFP】ギリシャのユーロ圏離脱という不吉な影が一段とふくれ上がっている。経済専門家たちが進めている高度に複雑な計算によれば、離脱の衝撃がもたらす損失は最大1兆ドル(約80兆円)に上ると算出されている。
損失額の概算の幅は広い。その理由のうちアナリストの大半が同意するのは、ギリシャのユーロ圏離脱――「Greek exit(ギリシャの離脱)」から「Grexit(グレクジット)」という造語で呼ばれる――の影響は「計算不可能」であり、どれだけ連鎖反応を引き起こすかによって変わる、という点だ。
■「Grexit」の直接コストだけで数十兆円
ドイツ金融会社DekaBankのアナリストによると、ギリシャがデフォルト(債務不履行)しユーロ圏を離脱した場合の直接的なコストは、欧州諸国と国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)が保有するギリシャ債権が受ける打撃だ。
欧州連合(EU)は既に、欧州金融安定基金(European Financial Stability Facility、EFSF)経由でギリシャに数十億ドルを融資している。
また、欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債は推計500~550億ユーロ(約5.1兆~5.6兆円)に達しているが、これらはギリシャのユーロ離脱により事実上、無価値になる。
さらに、中央銀行間のユーロ決済機構「ターゲット2(Target 2)」を通じてギリシャ中銀はECBに多額の債務を負っているが、スイス金融大手UBSのエコノミストによればこの債務額は1040億ユーロ(約10兆5000億円)に上る。
「Grexit」の直接コストの総額は、UBSのアナリストによれば2250億ユーロ(約23兆円)、DekaBankによれば3500億ユーロ(約35兆円)。DekaBankはこのうちドイツが被る損失額だけで860億ユーロ(約8兆7000億円)と推計している。
一方、英民間調査機関「経済ビジネスリサーチセンター(Centre for Economics and Business Research、CEBR)」のダグラス・マクウィリアムス(Douglas McWilliams)氏は前週、仮にユーロ圏解体が「無計画に」行われれば、損失額の合計はユーロ圏のGDPの5%に相当する1兆ドル(約80兆円)にも上るとの推計を出した。
■周辺国への連鎖反応、「ユーロ圏崩壊」の恐れ
直接コストだけでも既に膨大だが、経済専門家が本当に恐れているのは、ギリシャ離脱の波及効果、とくにイタリアやスペインなど脆弱経済のユーロ加盟国を脅かす「感染」の危険だ。
UBSのステファン・デオ(Stephane Deo)氏は「最も懸念されるのは、周辺国で銀行の取り付け騒動が起きる可能性だ」と述べる。「考えられるシナリオとしては、ギリシャが離脱し通貨ドラクマの価値が半分かそれ以下になった場合、欧州の一部の国で預金者が自分たちの預金も危険にさらされていると考え、取り付け騒ぎが起きることになる」
仮にそのような事態になれば社会は大混乱に陥るだろう。ECBと各国政府は介入を余儀なくされ、既に救済策の対象となっているアイルランドやギリシャ、ポルトガルなどに新たに数十億ユーロ規模の追加支援をしなければならなくなると、エコノミストらは指摘する。
ドイツIfo経済研究所のハンスベルナー・シン(Hans-Werner Sinn)所長は、ギリシャ離脱を受けてユーロ圏が崩壊したなら、ドイツ単独の損失額は1兆ユーロ(約101兆円)近くになるとの予測を示している。
■「大惨事からハルマゲドンまでの間」
ギリシャのユーロ圏離脱コストを考えれば、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相とフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領が初の共同記者会見で、ギリシャをユーロ圏にとどめたい考えを強調したのも無理はない。欧州議会のマルティン・シュルツ(Martin Schulz)議長は18日、ギリシャ経済は「数日中にも崩壊しかねない」と警告を発し、欧州各国に追加緊急支援を行うよう要求した。
しかし一方で、ECB政策理事会のリュック・クーン(Luc Coene)氏がギリシャとの「友好的な離婚」の可能性を口にするなど、わずか数週間前までタブーだったギリシャ離脱をめぐる公の場での発言は増加している。
メルケル首相の側近を務めるライナー・ブリューデレ(Rainer Bruederle)元経済技術相は、独経済紙ハンデルスブラット(Handelsblatt)のインタビューに「2年前とは異なり、現在のユーロ圏はギリシャ離脱に耐えることができる」と語っている。
国際金融協会(Institute of International Finance)のチャールズ・ダラーラ(Charles Dallara)専務理事は、「Grexit」のコスト見積もりについて問われ「大惨事とハルマゲドンの中間になるだろう」と語った。(c)AFP/Mathilde Richter
損失額の概算の幅は広い。その理由のうちアナリストの大半が同意するのは、ギリシャのユーロ圏離脱――「Greek exit(ギリシャの離脱)」から「Grexit(グレクジット)」という造語で呼ばれる――の影響は「計算不可能」であり、どれだけ連鎖反応を引き起こすかによって変わる、という点だ。
■「Grexit」の直接コストだけで数十兆円
ドイツ金融会社DekaBankのアナリストによると、ギリシャがデフォルト(債務不履行)しユーロ圏を離脱した場合の直接的なコストは、欧州諸国と国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)が保有するギリシャ債権が受ける打撃だ。
欧州連合(EU)は既に、欧州金融安定基金(European Financial Stability Facility、EFSF)経由でギリシャに数十億ドルを融資している。
また、欧州中央銀行(ECB)が保有するギリシャ国債は推計500~550億ユーロ(約5.1兆~5.6兆円)に達しているが、これらはギリシャのユーロ離脱により事実上、無価値になる。
さらに、中央銀行間のユーロ決済機構「ターゲット2(Target 2)」を通じてギリシャ中銀はECBに多額の債務を負っているが、スイス金融大手UBSのエコノミストによればこの債務額は1040億ユーロ(約10兆5000億円)に上る。
「Grexit」の直接コストの総額は、UBSのアナリストによれば2250億ユーロ(約23兆円)、DekaBankによれば3500億ユーロ(約35兆円)。DekaBankはこのうちドイツが被る損失額だけで860億ユーロ(約8兆7000億円)と推計している。
一方、英民間調査機関「経済ビジネスリサーチセンター(Centre for Economics and Business Research、CEBR)」のダグラス・マクウィリアムス(Douglas McWilliams)氏は前週、仮にユーロ圏解体が「無計画に」行われれば、損失額の合計はユーロ圏のGDPの5%に相当する1兆ドル(約80兆円)にも上るとの推計を出した。
■周辺国への連鎖反応、「ユーロ圏崩壊」の恐れ
直接コストだけでも既に膨大だが、経済専門家が本当に恐れているのは、ギリシャ離脱の波及効果、とくにイタリアやスペインなど脆弱経済のユーロ加盟国を脅かす「感染」の危険だ。
UBSのステファン・デオ(Stephane Deo)氏は「最も懸念されるのは、周辺国で銀行の取り付け騒動が起きる可能性だ」と述べる。「考えられるシナリオとしては、ギリシャが離脱し通貨ドラクマの価値が半分かそれ以下になった場合、欧州の一部の国で預金者が自分たちの預金も危険にさらされていると考え、取り付け騒ぎが起きることになる」
仮にそのような事態になれば社会は大混乱に陥るだろう。ECBと各国政府は介入を余儀なくされ、既に救済策の対象となっているアイルランドやギリシャ、ポルトガルなどに新たに数十億ユーロ規模の追加支援をしなければならなくなると、エコノミストらは指摘する。
ドイツIfo経済研究所のハンスベルナー・シン(Hans-Werner Sinn)所長は、ギリシャ離脱を受けてユーロ圏が崩壊したなら、ドイツ単独の損失額は1兆ユーロ(約101兆円)近くになるとの予測を示している。
■「大惨事からハルマゲドンまでの間」
ギリシャのユーロ圏離脱コストを考えれば、アンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相とフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領が初の共同記者会見で、ギリシャをユーロ圏にとどめたい考えを強調したのも無理はない。欧州議会のマルティン・シュルツ(Martin Schulz)議長は18日、ギリシャ経済は「数日中にも崩壊しかねない」と警告を発し、欧州各国に追加緊急支援を行うよう要求した。
しかし一方で、ECB政策理事会のリュック・クーン(Luc Coene)氏がギリシャとの「友好的な離婚」の可能性を口にするなど、わずか数週間前までタブーだったギリシャ離脱をめぐる公の場での発言は増加している。
メルケル首相の側近を務めるライナー・ブリューデレ(Rainer Bruederle)元経済技術相は、独経済紙ハンデルスブラット(Handelsblatt)のインタビューに「2年前とは異なり、現在のユーロ圏はギリシャ離脱に耐えることができる」と語っている。
国際金融協会(Institute of International Finance)のチャールズ・ダラーラ(Charles Dallara)専務理事は、「Grexit」のコスト見積もりについて問われ「大惨事とハルマゲドンの中間になるだろう」と語った。(c)AFP/Mathilde Richter