【4月3日 AFP】米マサチューセッツ(Massachusetts)の航空機ベンチャー、テラフジア(Terrafugia)はこのほど、公道も合法的に走行できる航空機の試験飛行を成功させた。交通渋滞にはまった時、この車で空を飛べたらと思った経験を持つ人は多いだろうが、そんなドライバーたちの夢が実現するかもしれない。

 テラフジアは、陸空両用航空機「トランジション(Transition)」の試作機で8分間の試験飛行に成功。年内にも同機の発売を目指すという。

   「試験飛行の成功で、これまで不可能だった夢を実現させる能力があることをわが社の開発チームは示した」と、創業者のカール・ディートリック(Carl Dietrich)氏は言う。一般販売に先駆けた特別販売の価格は1台27万9000ドル(約2300万円)で、すでに約100台の予約が入っているという。

 空飛ぶ自動車の開発に成功した企業は少なくないが、量産に成功した企業はまだない。しかし時代は変わり、新素材やCADの導入によって、安価で軽量な陸空両用車両の生産が可能になっている。

 国境警備隊や警察や軍、ホビイストを念頭に置いたメーカーが多い中、テラフジアは小回りが利く移動手段や駐機コスト削減を望むパイロットに対象を絞っている。

■車庫に入る航空機

 トランジションは2人乗りの陸空両用航空機。「フィアット500(Fiat 500)」のような丸みを帯びた車体に折りたたみ式の翼を持つ。車体の横幅は通常の車と同じ2.3メートル。翼を広げると8メートルになるが、折りたためば一般的な車庫に格納できる大きさだ。

 テラフジアは、トランジションはこれまでにない機動性を兼ね備え、燃料補給なしに最大787キロの飛行が可能だとしている。トランジションの運転には、自動車と航空機双方の免許と最低20時間の飛行経験が必要となる。

 離陸には2500フィート(約762メートル)の滑走路が必要となることから、同機で渋滞中の道路から抜け出すことは現実的には難しいかもしれない。

 テラフジアのほかにも少なくとも2社が空飛ぶ車両の商品化を目指している。オランダのPAL-Vはジャイロコプター型陸空両用車の試作機の試験飛行を実施済みで、現在は量産型試作機の製作と2014年の初納入を目指している。米カリフォルニア(California)を拠点とするモラー・インターナショナル(Moller International)は垂直離着陸が可能な自家用機の開発を進めているが、こちらは操縦訓練に多少長く時間がかかるという。(c)AFP/Andrew Beatty

【動画】
試験飛行を行ったトランジション(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)

【参考】
テラフジアのサイト(英語)