【1月20日 AFP】フィリピンの国家タバコ庁が、喫煙にではなく、養魚業にタバコ活用を推進する新キャンペーンを立ち上げた。

 19日会見した同庁経営企画部のレックス・テオソン(Rex Teoxon)部長によると、フィリピン北部ラウニオン(La Union)州で、400の養魚業者が今後半年以上をかけ、魚を餌とする軟体動物などの捕食生物を駆除するのに「タバコ粉」を使用する。フィリピンの養殖業では駆除に化学物質が使われているが、テオソン氏はこうした化学物質は「違法で毒性が高い」と指摘、タバコを使った方が安全だと同氏はアピールした。

「タバコ粉」は廃棄されるタバコの葉を粉末状に加工したもので、無料で養殖業者に配られるが、効果が証明されれば商品として売り出す予定だ。

 実験では、タバコ粉は捕食生物を殺すが、活性成分のニコチンは2~3日で蒸発してしまい、養殖される魚自体には何も影響がないことが示されているという。その上、海中の養分となり、養殖魚が餌とする海藻類の成長が促進されるという。

 今回のキャンペーンは、世界的な嫌煙・禁煙の流れの中で、タバコという作物の別の用途を模索しようとする試みの一環。

 フィリピン政府は喫煙やタバコ広告を厳格に規制しているが、同国経済に占めるタバコ産業の割合は今も大きい。テオソン氏が引用した2010年の政府調査によると、タバコ産業に依存する国民は290万人に上り、うち68万人が栽培者とその家族だという。 (c)AFP