【1月14日 AFP】「ドリームハウス」とは言えないかもしれない。だが、不動産価格が急上昇を続ける香港では、投資家の間で、持ち主が最近不幸な死を遂げたマンションが魅力的な物件となっている。気味の悪い死に方をした物件ほど、望ましいのだ。

 香港では、自殺、殺人、事故など、不自然な死に方をした人の霊は家に居座り続け、新たな住人に不幸をもたらすとの根強い迷信がある。香港では、購入を考えている人はその家が「幽霊屋敷」なのかを知る権利があり、物件購入の際に家の素性を徹底的に調べ上げる人は多い。

 だが、みんながみんな、幽霊を恐れているわけではない。上昇を続ける香港の不動産市場をめぐる攻防の中、一部の投資家はそうした悲劇を追い求めている。

「幽霊屋敷は20%から40%の値引きが当たり前です」と、オンライン不動産販売会社「squarefoot.com.hk」のエリック・ウォン(Eric Wong)氏は言う。同社サイトには、36階から飛び降り自殺をしたサッカー選手の家や練炭自殺をした女性の家、家政婦に惨殺されてバラバラにされた女性の家など、ぞっとするような物件が数百件掲載されている。抜け目のないバイヤーにとっては宝の山だ。

 家の良からぬ歴史を気にしない人に貸す目的でこうした不動産を購入する、幽霊屋敷専門の投資家も出てきているという。

■幽霊と同居せざるをえない現実

 香港では、2009年以降、住宅価格が70%以上跳ね上がった。銀行も、住宅ローンの金利を昨年3月から5回に渡って引き上げている。

 持ち家に手が届くのは今や富裕層だけというこの国で、30代後半になっても実家に住み続けざるをえない若者たちにとっては、たとえ幽霊屋敷であろうと、マイホームへの階段を昇ったことになる。

 親と同居しているというアビー・ラウ(Abby Lau)さん(26)は、自分と同年代の若者の多くは、現実的に手に入るマイホームとして、あるいは家賃が安い物件として、真剣に幽霊屋敷を考え始めていると語った。「なんといっても安いし、4、5年もすればその家で何があったかも忘れることでしょう。見返りは大きいかもしれません」

 だが、ラウさんも同年代の若者たちも、好むと好まざるとにかかわらず、幽霊たちと同居せざるをえないという現実を近いうちに悟ることになるかもしれない。

 というのも、香港に住む700万人は、小さなエリアにすし詰めにされた状態で暮らしている。そして、老朽化したマンションはたくさんあり、不幸な死というものがすべての街区で発生しているとしても不思議ではないからだ。(c)AFP/Aidan Jones

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