【12月28日 AFP】アラブ諸国の民衆蜂起や世界を駆けめぐったデモ、ユーロ圏を中心に深刻化する財政危機、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)の死――激動の2011年に起きた、政治・経済に関連する主な出来事を振り返る。

■民衆蜂起・抗議デモ

【アラブの春】

◇チュニジア <ベンアリ政権崩壊>

1月14日:チュニジアで拡大した反体制デモの結果、同国を23年間、強権政治で支配したジン・アビディン・ベンアリ(Zine El Abidine Ben Ali)大統領が国外逃亡。アラブ世界に広がった民主化運動「アラブの春」の火蓋を切る。

◇エジプト <ムバラク政権崩壊>

2月11日:18日間にわたり、エジプトの首都カイロ(Cairo)のタハリール広場(Tahrir Square)にホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領の即時退陣を求める大群集が集結。1981年から権力の座にあったムバラク大統領は11日、「アラブの春」で退陣に追い込まれた2人目の指導者となり、軍最高評議会が暫定的に権力掌握。この間の反体制デモで850人近い民間人が死亡。殺害指示などの罪を問われたムバラク前大統領の裁判が8月から始まった。

<ムバラク後初の議会選>
11月28-29日:エジプトではムバラク政権崩壊後初の人民議会(下院)選の第1回投票を実施。選挙前の1週間、全土では暫定統治する軍最高評議会に対し民政移行を求めるデモが多発し、42人が死亡。3回に分けて実施される投票の第2回目は12月14-15日に実施され、第1回目同様、イスラム政党がリード。第3回目は1月上旬に予定。

◇リビア <カダフィ政権崩壊>

2月15~16日:リビア第2の都市ベンガジ(Benghazi)で、最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐による42年間に及ぶ独裁体制の打倒を掲げ、反体制派が蜂起。

3月19日:リビアへの軍事攻撃を認める国連(UN)決議を受け、仏英米軍が空爆開始。3月31日には北大西洋条約機構(NATO)軍が全指揮権を引き継ぐ。反カダフィ勢力は暫定政府樹立を目指す連合体「国民評議会(National Transitional CouncilNTC)」を発足、カダフィ政権に代わる暫定統治機関として国連と世界60か国が承認。

<カダフィ大佐の死>10月20日:7か月間逃亡を続けていたカダフィ大佐が、自らの出身地であるリビア南部シルト(Sirte)でNTC部隊に拘束され、殺害される。10月23日、NTCはリビア全土の「解放」を宣言。

◇シリア <弾圧で生き残り図るアサド政権>

3月15日:シリアで民衆蜂起発生、治安部隊が激しく弾圧。バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権が国際的圧力に直面する。国連が12月に発表した、3月以降の弾圧による死者は5000人以上。12月19日、アサド政権はアラブ連盟(Arab League)の監視団を受け入れるが、20日現在も123人が殺害されるなど弾圧は続いている。

◇イエメン <サレハ大統領退陣>

11月23日:「アラブの春」以降、反体制デモと体制側の激しい衝突が続き、多数の死者を出したイエメンで、30年間権力の座にあったアリ・アブドラ・サレハ(Ali Abdullah Saleh)大統領が権限委譲案に署名。12月10日、来年2月21日に実施される大統領選までの移行期間を暫定統治する野党主導の挙国一致内閣が就任。


【欧州~米大陸】世界を駆けめぐった抗議行動

 スペインで5月17日に始まった反資本主義デモが世界へ飛び火。英国、チリなどから米国へ渡り、10月15日には世界同時行動へ。

【ロシア】不動のプーチン政権に亀裂?

 12月4日に投開票されたロシアの下院選挙で、苦戦しながら過半数を確保した与党・統一ロシア(United Russia)による不正が広範囲であったとして、ロシア各地に抗議デモが拡大。旧ソ連崩壊から20年、1990年代以降最大にして、プーチン氏の12年間の統治では初めての大規模な抗議行動が現在も続いている。


■ユーロ危機

◇ギリシャ危機

 欧州連合(EU)が9月27日に合意したギリシャ支援策について、ヨルギオス・パパンドレウ(George Papandreou)ギリシャ首相は10月31日、国民投票を行うと表明。しかし、これがユーロ圏を中心に同時株安を招き、11月4日にパパンドレウ首相は意向を撤回し、9日に辞任。前欧州中央銀行(ECB)副総裁のルーカス・パパデモス(Lucas Papademos)氏を後任とする大連立政権が発足。

◇イタリア、ベルルスコーニ首相退陣

 1兆9000億ユーロ(約200兆円)という巨額の公的債務を抱えたイタリアのシルビオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)首相は、債務危機回避を目指した財政健全化法案を成立させると、直後の11月12日に辞任。後任の元欧州委員、マリオ・モンティ(Mario Monti)新首相は2013年までに財政均衡を目指すと誓約。

◇シティー守りたい英国がEUで孤立

 12月8、9日に行われたEU首脳会議で、参加国首脳はユーロ圏債務危機の対策として国際通貨基金(IMF)への資金拠出と財政規律の強化で合意したが、これを目指したEU基本条約改正に、欧州一の金融セクターを有する英国のデービッド・キャメロン(David Cameron)首相は拒否権を行使した。


■一時代の終焉

◇ウサマ・ビンラディン容疑者の最期

5月2日:2001年米国同時多発テロの首謀者として米当局が指名手配し、10年の間行方を追い続けてきた国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者が潜伏先のパキスタンで米海軍の特殊部隊「シールズ(SEALs)」の急襲によって殺害された。

◇金正日総書記の死

 12月17日:北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)労働党総書記が死去。69歳だった。体制は後継者で三男の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)氏の統治基盤を固めようとしている。

◇米軍、イラクから完全撤退

 12月18日:イラク駐留米軍の撤退が完了。サダム・フセイン(Saddam Hussein)旧政権の打倒を目指したイラク侵攻で始まった戦争は約9年続いた。

(c)AFP

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