「年金でゆとりの老後」無理、定年後も働き続ける高齢者たち ドイツ
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【12月26日 AFP】欧州一の経済大国であると同時に65歳以上人口も欧州最多なドイツで、高齢者が年金収入を補うためにアルバイトを強いられる事態が起きている。
専門職向けの求職サイトでは「元気な年金受給者。身体的にも知的にも問題なし。月400ユーロ(約4万円)以上の仕事求む。コンピューターの知識豊富」などといった自己アピールを見かけることが珍しくない。ドイツ国内の退職者2000万人中、副収入を必要とする高齢者を対象としたいわゆる「ミニジョブ」を扱うコーナーがこうしたサイトにはよく設けられている。
フランクフルト(Frankfurt)郊外ジントリンゲン(Sindlingen)に住むノルベルト・マックさん(69)は「週2~3日、新聞を配達している」とAFPの取材に語った。「だいたいは昼ごろに着く広告入りのフリーペーパーだから、2~3時間あれば200~300部配れる。ショッピングカートを使って担当地域を回っているよ。終わった後は疲れを取るため、家で1~2時間、昼寝だ」
ジャーマン・シェパードの訓練が趣味だというマックさんは退職前、工業用機械製造業界で働いていた。月々入る年金は1500ユーロ(約15万3000円)。新聞配達で稼ぐ月約180ユーロ(約1万8300円)を病気の妻と自分、2人分の生活費の足しにしている。「古くなってしまった車と家庭菜園、それから犬が、わたしたち夫婦のささやかな楽しみだよ」
■食いつなげても、まともに暮らせない
こうした低賃金の「ミニジョブ」はそもそも、2003年にドイツ社会民主党(SPD)のゲアハルト・シュレーダー(Gerhard Schroeder)前政権が雇用対策として作り出したものだ。課税率が低いこともあり、65歳以上の高齢者の間で人気となった。この世代が「ミニジョブ」就業者の約11%を占めるという。
退職前はカスタマーサービス職だったゲルダ・ハーファーマルツさん(72)は、独東部エアフルト(Erfurt)のスーパーマーケットでスイス産チーズの宣伝販売をしている。「どうしても仕事を見つけなくちゃならなかった」と語るゲルダさん。夫とは離婚した。「年金は月880ユーロ(約9万円)。そのうち375ユーロ(約3万8000円)が家賃に消えてしまう。パートタイムの収入がなかったら、どうにか生きていくことはできるかもしれないけれど、まともに暮らしてはいけないわ」
■急増する働く高齢者、定年も引き上げへ
ドイツ労働社会省によると、年金を補うためパートタイムで働く高齢者は、過去10年間で58%増加した。年金受給者のパートタイム人口は2000年には41万7000人だったが、2010年には66万1000人に上っている。
欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタット(Eurostat)によると、65歳以上の世代はドイツ人口の約5分の1を占める。そんなドイツではまもなく、2006年に承認された法改定により、定年が65歳から段階的に67歳に引き上げられようとしている。(c)AFP/Eloi Rouyer and Francois Becker