【12月14日 AFP】中国が牽引する鉱物ブームによって2011年、世界経済と環境は大きく変化し、投資を競う鉱山企業大手が地球から記録的な量の天然資源を掘り出した。

 オーストラリア内陸部に計画されている世界最大の露天掘り鉱山開発が承認されたかと思うと、他方では広大な銅鉱床があるアマゾン熱帯雨林が標的にされるなど、世界の鉱山ブームは過熱していっている。

 鉄鉱石、金、その他の天然資源の空前の価格高騰のせいで、鉱山企業は世界中で「大盤振る舞い」をする資金を手にしているが、それはまた人びとの生活を変え、環境への影響が大きく懸念されるブームでもある。

「今年最も重要だった傾向は、多くの鉱山会社が非常に健全なバランスシートで、世界金融危機を潜り抜けたことだ」とロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of ScotlandRBS)の鉱業担当シニア・アナリスト、ウォーレン・エドニー(Warren Edney)氏は指摘している。動向調査によると、世界の鉱山企業全体の資本支出は2011年、前年の1000億ドル(約7兆7880億円)からさらに増え、1400億ドル(約10兆9000億円)に達した。

 歴史的な近代化を進める中国の天然資源に対する欲望は、資源の種類を問わずとどまるところを知らず、同国は世界の工場たる地位を保ったまま、資源価格高騰の牽引役ともなっている。今年後半には世界経済の先行きの不透明感から価格は落ち着いたが、鉱業大手は資源ブームによって短期的な危機を乗り切れると確信し、開発路線を推し進めている。

 英豪系資源大手リオ・ティント(Rio Tinto)のトム・アルバニーズ(Tom Albanese)最高経営責任者(CEO)は11月、中国の成長は長期的需要が見込めるもので、自分たちのバランスシートの良好さを考えれば、将来の需要に備えて投資を継続すると宣言した。同社は今年の投資支出の見込み額を120億ドル(約9340億円)と発表している。

■経済の後押しか、健康や環境への脅威か

 金融危機の再来が懸念される中、こうした投資は世界中の国・地域で、強力な経済の後押しとなっているが、急速に拡大する鉱山企業の開発は同時に、各地で社会的緊張を生みだしているとともに、環境に関する懸念を引き起こしている。

 ペルーでは12月に入り、米鉱山大手ニューモント(Newmont)が進める開発事業に対する地元の抗議を収拾するために、オジャンタ・ウマラ(Ollanta Humala)大統領が非常事態宣言を発令せざるをえない事態に追い込まれた。標高3700メートルでニューモントが計画する露天採掘事業によって、周辺の水系と、地域の基幹産業である牧畜が破壊されるのではないかと住民たちは危惧している。

 中国と同じく資源を渇望するインドでは、南部カルナタカ(Karnataka)州で大規模な森林破壊と環境悪化が報告され、司法が鉱山事業に介入、最高裁は7月、同州のすべての採掘事業を禁止した。同州では年間3500万トンの鉄鉱石が生産されている。

 マレーシアでも、豪資源会社ライナス(Lynas Corporation)が進めているレアアース(希土類)精錬工場の建設が、住民たちから非難の砲火を浴びている。中国以外で初のレアアース供給源となることを目指した工場だが、放射性廃棄物によって住民の健康や周辺環境に害が及ぶのではないかという懸念から大規模な抗議が起こった。このため、今年第3四半期に予定されていた操業開始は遅れている。

 埋蔵資源が豊富な内陸国モンゴルの政府は、リオ・ティントとカナダ系資源大手アイバンホー・マインズ(Ivanhoe Mines)との交渉に手こずっている。大規模な金鉱と銅鉱の採掘事業から現在、同国が得ている収益の配分は34%。モンゴル政府はこれを50%に引き上げるための再交渉を試みたが、両社から強硬な抵抗にあい断念した。(c)AFP/Karl Malakunas

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