【10月19日 AFP】米国と太平洋周辺の9か国は、来月のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、APEC全域での貿易協定成立に向けた一歩として重要なTPP(環太平洋連携協定、Trans-Pacific Partnership)について重要な発表をすることを目指している。

 複数の米当局者は17日、米ハワイ(Hawaii)のホノルル(Honolulu)で11月12、13両日に開催されるAPEC首脳会議で、9か国首脳が「合意についての大枠」で合意するだろうとの見通しを示した。

 TPPの交渉は2年間以上前から進められてきた。成立すれば、世界の経済生産の4分の1を占める国々が参加する貿易協定になる。

 米通商代表部(US Trade RepresentativeUSTR)のキャロル・ガスリー(Carol Guthrie)報道官によると、9か国の交渉担当者は、19日から6~10日間の日程でペルー・リマ(Lima)で協定の全体像をまとめる調整を行う。

■TPPはAPEC自由貿易圏への足がかり?

 ホノルルの首脳会議後もいっそうの交渉は必要になるだろうが、TPPはサプライチェーンマネジメントから知的財産権保護、投資、国営企業に関する規則の他、貿易に関する多数の項目をカバーするものになるとみられている。

 全米製造業者協会(US National Association of Manufacturers)の国際貿易政策部門トップ、ダグラス・グーディー(Douglas Goudie)氏は「(TPPは)包括的だ。非常に重要な成長市場であるベトナムやマレーシア、それにニュージーランドの先進国市場にアクセスできるようになる」と語る。

 多くの人びとが、オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの9か国による合意が、域内の大国である中国と日本、そしてロシアも含む合意に向けた足がかりになると期待を寄せている。

 TPPが結実しつつある一方で、アジア太平洋全域に及ぶ自由貿易協定に向けた協議は長らく頓挫してきた。だが貿易団体などは、ホノルルでの首脳会議とTPP交渉の結果が、この流れに政治的な勢いをつけることを期待している。

 APECに参加する21の国と地域の全てが参加する協定ができれば、世界貿易の約50%をカバーするものになる。これは世界の貿易の流れを大きく変える潜在力がある。

「APEC全体のどんな自由貿易協定も、本質的に長期的な構想だ。だがこの先重要な一歩になる」と、米サービス産業連盟(US Coalition of Service Industries)のジョン・ゴイヤー(John Goyer)氏は語る。

■TPPの運命を左右する日本

 TPPは世界の半分をカバーする重要な貿易協定の基礎になるのか、それとも数多く存在する多国間協定のうちの1つで終わるのか。それを決める上で日本が重要な役割を果たす可能性があると貿易専門家たちは指摘する。

「交渉に参加する国が多くなればなるほど、その協定が他の国々にとって魅力的なものになる」と、ゴイヤー氏。

 オーストラリアの元通商担当外交官で、米有力シンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のジョシュア・メルツァー(Joshua Meltzer)氏も同じ見解だ。

 メルツァー氏は「現在交渉中の国に続いて、どの国が参加を希望するかを観察する必要がある」と述べ、「日本政府の上層部は、少なくとも1年前からTPP参加を希望している」と語る。

 だが東日本大震災で日本のTPP参加に向けた動きが止まったという。「地震で日本国内の政治状況が変わった。地震は日本の農水省と農業界に、今は農業部門を自由化する時期ではなく、復興に注力すべきときだと反論する機会を与えた」とメルツァー氏は述べ、「問題は、その主張が勝利するのかどうかだ」と語った。

 ホノルルでの首脳会議で、野田佳彦(Yoshihiko Noda)首相が自らの選択を発表する可能性もある。

 日本以外ではカナダやフィリピン、韓国、台湾もTPP参加への関心を示しているが、中国はまだその姿勢を明らかにしていない。メルツァー氏は「現時点で中国のTPP参加の議論はない」と語った。(c)AFP/Andrew Beatty